「公務員」が好きな母親たちの影響

 私は、公務員を目指す人たちには「志」があると信じています。「地域社会に貢献したい」「国民の生活を良くしたい」「国家の政策に関わりたい」などです。もちろん、そういう志のもとに、公務員として一生懸命働いている方々もたくさんいらっしゃいます。しかしながら、公務員を選ぶ20代・30代の男性たちのなかには、そういった「志」ではなく「母親の意向」が決定要因になっている人がたくさんいます。

 「僕は民間でも良かったのですが、母が、公務員が一番いいと言ったので就職を決めました」

 毎年、某省庁の係長研修で、26~28歳の男性たちに教えていますが、彼らに上級国家公務員に就職した動機を聴くと、必ずといっていいほど、母親の存在が出てきます。一人息子を溺愛する母親たちは、「公務員神話」を持っているのかもしれません。安定、安心の生涯保証的なイメージです。

 某銀行から公務員に転職を決めた、自宅暮らしの20代男性のところに、人事部長が説得に行ったところ、「息子の人生なんですよ。息子が公務員になると決めたのですから、引き留められても困ります」 と母親にぴしゃりと断られたそうです。20代・30代の男性は、草食系で母親との絆が非常に強いという話をしてきましたが、まさに、母親が息子の人生において大きな影響力を及ぼしています。

結婚で、より安定志向に

 「社内結婚になると、いずれはどちらかが退職しなくてはならないかと思っていたら、彼が公務員試験を受けて転職しました。相談がなく突然だったので驚きました」

 こちらは働き続けたい20代半ばの同世代カップル、肉食女子の彼の転職理由です。彼女自身は彼の公務員転職にちょっと驚き戸惑っています。彼の場合は、母親の影響は少ないようですが、「結婚をタイミングに働き続けたい彼女が転職する方が大変、だったら自分が転職。しかも、子供が生まれたりすることを考えたら公務員が一番安定していてよいだろう」という優しい配慮が、根本にはあるようです。社内結婚をタイミングに男性が転職する時代……になってきているのかもしれません。

 「昨年、娘が生まれて妻の実家の近くに住んでいます。今回、本社に転勤になってしまいました。関西から関東へ、僕は一人で単身赴任するんですが、不安だし、寂しいし。周りからは10年は戻ってこられない、片道切符かもと言われています。でも、妻と子供を誰も知り合いのいない場所に引っ越させるなんてかわいそうでできません。地元の公務員にでもなろうかと本気で考え始めています」。

 某企業、課長研修での35歳の男性。まさにイクメン世代です。本社に転勤しての仕事は大抜てきのようですが、彼にとっては家族との関係において、転勤を伴うこの人事異動はかなり苦痛となっているようです。総合職は転勤が当たり前、男は転勤が当たり前……この昭和の常識も崩れつつあることが分かります。