植田 寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

 某民間企業「2年連続、公務員になるということで20代男性が退職しました」

 某社団法人「企業の営業職のプレッシャーから、半民半官的なうちの会社に2年前に転職してきた20代後半の男性が、公務員試験に受かったということで退職してしまいました」

 某地方銀行「この1年間で、20代・30代の男性ばかり10人以上退職してしまいました。転職先は全員が公務員です」

 今年、2~3月に私が研修や講演をした会社の人事部の方々から、次々に聞こえてきた嘆きのメッセージです。

 最近の20代・30代は就職も転職も売り手市場といわれています。正社員として、しっかり働いてきていれば、自分がやりたいことや夢の実現のために、新たな場所でチャレンジする転職も、意外に苦労なくできたりする時代です。実際、20代・30代で転職をする人は増えています。しかし、20代・30代の男性たちを見ると、積極的なチャレンジ精神からの動機ではない人が多そうです。外資系やベンチャー企業に転職する人は少なく、公務員への転職が急増中です。20代・30代の男性たちに安定志向が多くなっていることを映し出しています。

転職の動機は「安定、継続、安心」

 20代・30代の男性はなぜ公務員に転職するのか? 彼らの気持ちの一端をご紹介します。

・リストラなどがなく、安定した収入を得られる
・個人に対して業績を求めるプレッシャーがない
・地方転勤がない
・競争がない
・普通に真面目にやっていれば、給料も徐々に増え、
 いつか管理職になれる

 「男と生まれたからには、いつかは一国一城の主になりたい。偉くなりたい」「同期に負けたくない。出世競争のトップになりたい」。昭和時代の多くの男性が当たり前に持っていた、競争心、ライバル心、上昇志向、闘争本能は見られません。20代・30代の男性に見られるのは、なるべく穏やかに毎日が過ごせて、長く働き続けたいという「安定、継続、安心」を求める保守的な感覚です。

 事実、ゆとり世代は競争や挫折という体験を学生時代にほとんど持っていません。また、少子化のなか、特に男性たちは母親の寵愛を一身に受けて、大切にされまくって育っています。民間企業の昭和の組織風土が残る軍隊型組織の中で、業績を求められたり、評価されたり、競争させられたりすることに、プレッシャーを感じている20代・30代の男性は多くなっています。