女性管理職が求める女性メンター

 「初の女性所長ということで、会社や周りからの期待をひしひしと感じます。うれしさよりも、重い責任と期待からのプレッシャーに押しつぶされそうです。初ですからロールモデルはいません。また相談できる女性のメンターがいません。先生、私のメンターになってもらえませんか?」

 「会社にはメンター制度があって、一応男性の上位職の方がメンターでついたのですが……。女性である私の気持ちは分からないようです。女性で相談できる先輩がいません。迷ったり、困ったりした時に先生を頼って、メールしてもいいですか?」

 某企業の女性キャリア支援研修の後、初の女性所長に任命された2人から相談されました。彼女たちは30~40代。営業部門で女性活躍の最前線を走っていました。彼女たちの姿に憧れ、彼女たちをロールモデルに仕事をしている20~30代の女性たちがたくさんいます。しかし、彼女たち自身にはロールモデルも、公私を含めて悩みを相談できる女性の先輩や人生の先生、メンターがいません。私たちの成長には、キャリアの階段を上がったり、坂道を上る時に、背中を押してくれたり、坂の上から手を差し伸ばしてくれる人生の先生、「メンター」の存在が重要です。

 「女性管理職に対するメンター制度」を導入している会社は結構ありますが、だいたいの場合、役員や2ポジションくらい上の男性管理職がメンターとなっているようです。当事者の希望を考慮せずに勝手に人事がメンターを決める形が多く、制度があまり機能していません。会社が決めたメンターに女性たちはなんでも相談できるでしょうか? メンタリングは、もともとインフォーマルなものです。本人が信頼でき、尊敬できる人生の先生を選ばなければ意味がありません。

 私は、彼女たちとは初対面で1日の研修しかしていません。そんな私に対して「メンターになってほしい」と言うということは、すべての女性管理職はメンターを求めているが、周りにいないのだと思います。彼女たちに限らず、「植田さんは私のメンターです」と言ってくれる女性たちが周りに増えています。私が彼女たちに伝えているのは、

 「私から、声をかけることはできないと思う。でもあなたが、本当に困った。どうしたらいいか分からない。壁にぶち当たってどうしようもない。つらくてたまらない……ということがあったらメールしてね。飛んではいけないけど、話はちゃんと聞くから。私ができることはそれくらいだけど、それでいいなら私はあなたの応援団、メンターよ」

 「自分には応援団がいる」「自分をしっかり見守ってくれるメンターがいる」と思えることは、女性管理職にとってこの上ない安心感になります。実際、彼女たちは人生の節目、大きな決断の時、深く落ち込んだ時に連絡をくれます。私は彼女たちの気持ちに寄り添い、できる限りの応援をします。

 私がなぜ、今、多くの女性たちのメンター的な役割をしているか?それは、私が30代で、ANAグループの課長・部長へのステップを上っていった頃に、私の心を支えてくれたメンターの存在があったからです。あのメンターたちがいなかったら、どこかで足が止まってしまったかもしれません。当時、私のメンターは男性の方々でしたが、女性のメンターがいたらなと思いました。私にも、「やっぱり女性の私の気持ちは男性には分からないのか……」と思う瞬間があったからです。

 春に管理職となり昇格した女性たち。彼女たちの笑顔が消えることなく、成長し続けるために、共鳴する仲間、メンターが必要であることを本人自身、そして会社にも知っておいてほしいと思います。また、皆さんの企業で、女性の取締役、執行役員、事業部長がいらっしゃったら、会社の制度などに関係なく、自ら率先して昇進したばかりの女性管理職のメンターになってほしいと思います。自分のポジションまで彼女たちが成長すること、自分を超えるくらい成長することを応援できるのは女性のメンターだと、私は思います。

植田寿乃氏のセミナー
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植田 寿乃(うえだ・ひさの) キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント
植田 寿乃

 キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント。IT業界の人材育成を目的に有限会社キューを設立。その後、人材開発業界に転身。「モチベーション・リーダーシップ」「経営陣、管理職の人間力アップ」「女性と組織の活性化」「メンター育成」に取り組み、各種オリジナルカリキュラムを開発し、研修・講演を実施。著書に『「女性を活かす」会社の法則』『キャリアセレブになる36の秘訣』『30歳からの幸せなキャリアの見つけ方』など。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。