「あと3年で60歳の定年です。それから先のことを考えると怖くて仕方がありません。仕事一筋で生きてきました。土日の休みを返上は当たり前、週に2日も休みなんていらないと思っています。夏休みとかで1週間休みなんてなっても家でやることもないし。仕事がなくなったら、僕はどうなるんでしょう」

 これは57歳の某会社の執行役員の男性の言葉です。会社で上り詰めてきたものの60歳以降の自分の将来像が全く描けていません。キャリアビジョンどころか、ライフビジョンもないようです。人生を会社に捧げるだけで、自分自身のことを何も考えてこなかった男性によく見る姿です。

「再雇用では給料が激減で新入社員並みです。部下が上司になるような状態で働くことは屈辱以外の何物でもありません。しかし、年金もまだ出ないし、退職金で悠々自適というわけにもいかない。植田さんはうらやましいですよ。定年がないんでしょう。自分が辞めたくなるまで続けられるのでしょう?」
「植田さんは50代で出張ばかりで大変でしょう。何を目指して働いているんですか? なんで楽しそうに働けるのですか?」

 最近、50代の男性受講生の方々からよく言われる言葉です。私の働き方や生き方がうらやましく見えるとしたら、それは私が、図の青丸と赤丸の重なり度合いが大きいからにほかなりません。しかし、私も20代から30代の会社勤めの頃は、自分のキャリアビジョン(赤丸)がありませんでした。目の前の仕事をただひたすらに頑張る、今やらなくてはならないことだけを必死でやるという働き方をしていました。そうやって頑張って結果を出していれば何とかなる、会社がちゃんと認めてくれると信じて生きていたように思います。会社に自分の人生を依存している状態でした。

 38歳で独立起業してからは、自分の生活を保障してくれる組織がなくなりました。安定した大型客船から、荒波にもまれる小舟に1人飛び降りた感覚です。目的地も自分で探し、そこに行くにも自分で舟をこがなくてはならない。でも不思議なもので、その荒波の中で進むすべを体得した時、荒波と感じていた海を自由に謳歌できるようになりました。いささか表現がイメージに飛びましたが、自分のキャリアビジョンをしっかり持った時に、目の前の仕事は新鮮になり、充実感は高まります。自分自身に自信を持てるようになります。