植田寿乃
キャリアコンサルタント/ダイバーシティコンサルタント

 昨年は、女性比率の少ない重工業でのダイバーシティ推進、女性活躍推進の講演が非常に増えました。最後に重い腰を上げてきた業界を、たくさん回りました。これは、某企業で10回近く全国講演をさせていただいた時の、ある工場での工場長との顔合わせでの場面です。

本社人事担当者「植田先生。うちの会社もダイバーシティ推進のために『働き方改革』をしていく必要があるということで、在宅勤務制度を育児中の女性だけでなく、全社員、男性も含めて行う取り組みが、この夏から始まりました」

植田「それは、いいですね」

工場長「俺は聞いてないぞ、そんな取り組みは」

部下「いえ、社長命令の取り組みで、うちの工場でも8月からやっています。2名の男性が週1回の在宅勤務をしています」

工場長「本当か? 一体、うちの工場では誰が対象になってるんだ?」

部下「AさんとBさんです」

工場長「その二人なら、分かるよ。あいつらは会社にいなくても構わない奴らだからな。だいたい、平日に家で仕事なんて、できるわけがないだろう。だいたい女房から何て言われる? 俺なんて週末家にいたって、邪魔だって文句言われているんだから、家で仕事したいなんて絶対に思わないな。お前もそうだろう?」 部下「はっは〜」 工場長「それに、水曜日の定時の一斉退社日も止めてほしいよな。あんなの嬉しい男がいるのか?男は仕事だろ。家に帰ったって俺の分の夕飯なんてないし、結局、毎週のように部下を誘って飲んで帰って、帰宅時間は他の日と同じだよ」 (彼を除いた一同が失笑)

 同じ企業での講演なのに、この工場だけが昭和風土が蔓延していました。この工場長の昭和的人生観が、工場の組織風土を昭和のまま停滞させてしまっていました。講演に参加した男性管理職たちの顔は暗く厳しく、同じ会社の他の工場や研究所、本社のような笑顔はありませんでした。この工場は、不健全な組織風土の状態です。

 女性活躍推進、ダイバーシティ推進をやっていく場面で、女性が少ない(1割程度)企業というのは、実はなかなか大変です。なぜなら、女性の力を借りられないからです。女性たちの笑顔、しなやかな強さ、柔軟性、そして若手肉食女子のパワーは会社をどんどん変化させていく勢いがあります。

 しかし、ほとんどの社員が男性で、何十年も男の社会を続けてきた会社には、「ダイバーシティ」「女性活躍推進」「働き方改革」と次々にやってくる時代のキーワードや大きな変化の波が、ピンと来ていないところがまだまだたくさんあります。