ジョンソン・エンド・ジョンソンのダイバーシティ経営は世界的に有名である。しかし、その同社でも、少し前まではほとんどの部署で長時間労働が課題であったという。その課題をどのように解決していったのか。「経営陣の強いコミットによるトップダウンと、地道な活動で社員の意識を変えるボトムアップが成果を生んでいる」とメディカル部門の人事トップである、ジョンソン・エンド・ジョンソン メディカルカンパニー HRディレクターの黒川華恵氏は語る
(取材=麓幸子:日経BP社 執行役員、文=西尾英子)

プレジデント自ら朝食を配布、社員の意識と行動変容を促す

――2015年からメディカル部門の人事トップとして組織をけん引されています。現在、企業にとって、働き方改革が喫緊の課題となっています。働き方改革を進める上で、どのような課題があるとお考えですか?

黒川:以前は、ほとんどの部門で長時間労働が課題となっていました。使命感や責任感の強さから、夜遅くまで仕事をして残業時間が80時間を超えてしまう従業員も多かった状況です。特に営業部門ではそうした働き方が当たり前となっていました。

 もっと生産性にフォーカスしたやり方に変えていかなくてはいけないと、まずは、働き方改革をメディカルカンパニーの戦略的優先課題として掲げ、メディカル カンパニー プレジデントの日色が主導になって2015年より本格的に取り組みをスタートしました。一方で、他のカンパニーも働き方改革はチャレンジすべき課題として共通認識を持っていました。2016年にそれまで4つのカンパニーそれぞれに存在した人事部門を統合しカンパニーの垣根を越えたOne Enterprise HRチームを立ち上げました。このような組織的な変革を利用しながら、我々人事は事業部のリーダーたちとより強固に連携しながら、働き方改革も進めています。

ジョンソン・エンド・ジョンソン 黒川 華恵氏
医療機器の製造、販売ビジネスの人事責任者としてリーダーシップ開発、タレント育成、ダイバーシティー、組織開発及びコーチング等を推進。日本GEにて約10年間、組織及び人材開発、ダイバーシティー推進、GEヘルスケアジャパン及びアジア太平洋地域のHRリーダーを経て2015年3月1日より現職。GE入社以前は日本オラクルにて様々な業種、業態に対するHRソリューションのコンサルティング、トレーニングに従事。

――具体的な取り組みとしては、どのような活動をしたのでしょうか。

黒川:働き方を改善するには、従業員ひとり一人に考え方と行動を変えてもらう必要があります。考え方、行動を変える=スイッチするという意味を込めて、2015年の7月から「switch!キャンペーン」を行いました。4つのカンパニーのプレジデントと事業部のリーダーが朝7時45分にビルのロビーで出勤してくる社員に朝食を配りました。これにより夏は早めに出社し、一番頭が冴えているといわれている午前中に仕事を片付け、1時間でも早く帰宅し、家族や友人等大切な人との時間や勉強時間を充実させようという提案を行いました。