英国に本社を持つ外資系製薬会社アストラゼネカは、革新的新薬の開発というミッションのもと、日本を含む世界100カ国以上で事業を展開している。同社が重視するのは、医療の現場でドクターに医薬品の情報を提供するMRの働きがいと自律性を高める環境を整えること。「社員一人ひとりが自ら変化を起こせると実感することが大切」と語る執行役員の舛谷隆直人事総務本部長に、現場との双方向コミュニケーションによって進める改革の取り組みについて聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 執行役員、文=谷口絵美)

「働きがいのある職場」づくりは重要な事業戦略のひとつ

――まずはアストラゼネカでは事業戦略の柱の一つとして、従業員の働きがいを重視しているそうですね。

舛谷人事総務本部長(以下、舛谷):我々が一番大切にすべきことは、患者さんが望むQOLを実現できるようなイノベーティブな薬を提供していくことです。それを実現していくための貴重な資産は人材をおいてほかになく、社員がモチベーション高く、自律的に仕事ができる環境づくりを常に追求していかなくてはいけません。それが、当社の戦略の一つに掲げる「働きがいのある職場」づくりであり、重要だと認識しています。

――そのためにどのような取り組みをされているのでしょうか。

舛谷:社員と会社がコミュニケーションのキャッチボールを行い、そのフィードバックに基づいて改革を進めることを重視しています。社員の意見に耳を傾け会社の考えを伝えることで、一緒にバランスの取れた解決策を探し、患者さんへの貢献を実現していく上で意味のある変化を社内で起こしていくことを目指しています。そして同時に社員も、責任を持って自律的に能力開発を進めるというのが大枠の考え方です。

 具体的には今年の1月から就業規則を一部改定しました。変更にあたっては、私自身も、半年をかけて社員の代表とディスカッションを行ったり、全国の支社に出向いて意見を聞いたりしました。

 当社では女性社員の採用を積極的に行っており、女性のキャリア拡充をサポートする制度をさらに充実させています。そこで、産休・育休の期間を従来の1歳半から2歳までに延長し、さらに当社独自の「育児補助手当」をより使いやすい形に変更しました。

 これは、ある一定条件のもとで育児に関する出費を補助するというものですが、従来は適用範囲が分かりにくく、混乱が生じていました。そこで「出張や急な会議などのために臨時で子どもを預ける必要が発生したときの費用」と、「その際に親や親戚がサポートで来てくれる際の交通費」を年間36万円まで補助すると具体的に規定。使用基準を分かりやすくしました。

 ほかにも「パタニティーリーブサポート」として男性の10日間の育休について、以前は3回に分けて1回最短3日間から取得できるとしていたものを、1日から使えるようにしました。

アストラゼネカ 舛谷本部長
大阪外国語大学(現 大阪大学)卒業後、リクルート入社。プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン入社。採用、教育、オペレーションなどの人事主要部門を担当する。バイエル薬品執行役員人事部長就任。’17年アストラゼネカ執行役員・人事総務本部長就任。