宮城県に本社を置く日立ソリューションズ東日本は、多くのIT系企業がそうであるように長時間労働の改善が急務であると考え、2014年から働き方改革を経営方針に取り入れてきた。従来とは真逆の価値観である「『残業が当たり前』は悪」という意識を浸透させ、改革の進捗を全社員に数値で見える化。全社的な改革の機運へとつなげる仕掛けや、生産性向上に寄与するビジネスモデルの変化について、八田直久社長に聞いた。
(取材=麓幸子:日経BP社 執行役員、文=谷口絵美)

WLB観点なら「やらされ感」がなく自分事になる

――社長はES(従業員満足度)をとても重視されているそうですね。

八田社長(以下、八田):当社は昔から社員の満足度調査を実施していて、社員の声から様々な経営課題を抽出してきました。その中で、近年はキーワードとして働き方の改革とダイバーシティへの要望が高まってきました。ご存じの通り、IT業界は残業が多いということもあって、このままでは健康面でも家庭生活の面でも、いろいろな問題が増えてくるだろうという危機感を持ちました。

――働き方については、どのような改革に取り組んでこられたのでしょうか。

八田:私が社長に就任した2014年4月から働き方改革を経営方針に取り入れ、「スマートワーク2000」という全社的な運動を立ち上げました。当時は社員の年間総労働時間が平均2000時間を超えていたので、まずは2000時間以下にする。そのためにはどんな施策が必要かを考えることから始めました。

 仕事量が変わらない中で残業を減らすためには、管理職を中心に意識を変える必要があります。その頃の管理職はというと、「そうはいっても、仕事はあるじゃないか」という意見が大半で、定時で帰ることに「もう帰るのか?」という雰囲気が現場にはまだまだ残っていました。「仕事のやり方を変える」ということへの意識改革を、1年目は集中的にやりました。

 早く帰る方が善なのだと私自身も繰り返し言い続けた結果、どうしたらみんなが早く帰れるようになるかということを現場が考えるようになってきました。まさに生産性や効率の向上というところに向かっていったわけです。

――社長からのメッセージは、どんな場でどのように伝えたのでしょうか。

八田:半期ごとの期首あいさつや予算会議、管理職が出席する会議などで毎回話しています。2週間に1度行う経営会議では各部署の残業時間を見える化し、「うちの部門は成績が悪いんだ、大変だ」という意識を持たせるようにしました。17年4月からは「ワークスタイル改革推進本部」という、スマートワーク2000を推進する専門組織も新たに立ち上げました。

 同時に、仕事の中で無駄をなくす「IMPACT2018」という活動も進めています。これは事務やシステム系の部署での業務プロセス改善が目的です。また、大幅な権限委譲も実施し、今まで役員の承認が必要だったものを、統括本部長という一つ下のクラスにも権限を与えました。決裁のプロセスを一つでも減らすことが狙いです。

八田社長
1979年 名古屋工業大学工学部卒業。同年日立製作所入社。2006年情報・通信グループ 産業・流通システム事業部産業第二システム本部長。08年 情報・通信グループ 産業・流通システム事業部ビジネス企画本部長。10年 日立ソリューションズ東日本取締役。14年 取締役社長。