和田 裕美
作家・営業コンサルタント

納得のいく「考え方」の指導で部下の心が動く

 振り返れば「お前、そろそろ部下を育ててみなさい」と言われた25歳のときというのは、私がフルコミッションの営業を始めてようやく売り上げが上がるようになったばかりでした。まさかそんな状態で自分以外の誰かの数字まで責任を持つことになるのは思いもよらず、とっさに「私などまだまだ未熟ですし、ご迷惑をかけると思います、それにまだ上司になれるイメージもありません。とにかく無理です。まだいいいです」とその上司の指示を遠慮がちにお断りしたのでした。

 ちなみに私がいた外資系会社は、早くから組織を作らせてプロモーションをさせるというアメリカならではのシステムが当たり前にあったので、どんな人でもパーソナルオーダー(個人売り上げ)が上がってくるとすぐに組織を作るように指導されるのです。そのときの上司の顔は今でも覚えているのですが、彼は顔を真っ赤にして机をバンバンと叩いて、すごい剣幕で私に怒鳴ったのです。

「ばかやろう!お前はやりもしないでできないと決めるのか?
やったことないのにどうやって無理だというのか?」

私は上気した上司の態度に圧倒され、小動物のように小さくなって固まってしまい何も言えませんでした。

 すると上司は続けました。

「お前はお客様に『やってみないとわからない』と言うだろう?
しかし、自分は一度もやりもしないまま、やってもいないことを無理だというのだな。
それはな、矛盾だ」

 恐怖で震えながらも私は自分が先ほど言った言葉のなかにはっきりと矛盾を感じました。そう、人には「やってみないとわからないからぜひ前に進んでください」と言っているのに、自分はやりもしないで無理と言ってしまったのです。