⑥安全志向(失敗の回避)

 ウォーターフォール型の目標管理においては、与えられた目標の達成が最優先されます。目標を達成するためには、大きなリスクは取らずに失敗を回避することが得策と考えられるため、安全志向の判断や行動が強化されることになります。例えば、期の途中において大きなビジネスチャンスが現れても、やってみなければ成果が分からないようなことはやらないといった判断がなされる恐れがあります。

 また、これから成功の方程式を模索するスタートアップビジネスでは、最初からうまくいくことはほとんどあり得ず、実験と検証を繰り返しながら失敗から学ぶことが重要です。しかし、ここに達成度評価が持ち込まれると、新たな実験自体が回避され、新規事業の可能性が狭められる危険性があります。

⑦プロセス管理への偏重

 ウォーターフォール型の目標管理の大命題は目標を達成することにあるため、そのマネジメントではまず達成度が管理されます。例えば、売り上げ目標の達成度が管理される場合、売り上げという最終結果だけではきめ細かな管理ができないため、顧客の訪問件数や提案件数などのKPIの進捗状況も把握されます。これらはすべてプロセスだけを見ていて、そこに携わる人が誰かを問いません。もちろん、プロセス管理が不要というわけではありませんが、そこに偏重しすぎると一人ひとりを内発的に動機付ける視点が欠落してしまいます。その結果、厳しく管理しても個人のパフォーマンスが高まらない状況に陥ってしまうのです。

相対評価によるレーティング

 目標の達成度に基づいて相対評価でレーティングを行うのが成果主義人事の特徴ですが、個人の成績をランク付けするレーティング自体の問題点が、アメリカでの研究によって、いくつも指摘されています。

⑧グロースマインドセットの毀損

 人が成長するためには「努力すれば成長できる」というマインドセット(グロースマインドセット)の状態にあることが必要であるという、スタンフォード大学のキャロル・ドウェック教授によるマインドセットの有名な研究があります。ところが、ここ数年のアメリカでの脳科学研究によると、数値によるレーティングはこのグロースマインドセットを毀損してしまうことが分かってきています。従業員の大多数を占める中間層に対して、B評価やC評価をフィードバックすることは、大勢の人々の成長可能性を阻害する結果につながっているのです。

⑨中庸意識の強化

 同じくアメリカでの研究結果によると、そもそも人のパフォーマンスは正規分布しないことが検証されていますが、それを相対評価によって無理に正規分布させることで様々なひずみが生じます。特に、正規分布では平均点周辺の人数が最も多くなりますが、そのことは「ほかの人と同じくらいの平均的な成果を出していれば安泰」という中庸意識を強化してしまいます。ものすごくがんばらなくても中庸でよいという意識を持った人が過半数を占めるような組織では、現状の大きな変革や大幅な生産性の向上が起こりにくくなってしまいます。