③経験学習効果の不足

 個人のパフォーマンス向上は成長によって可能になります。そして、その成長の大部分は仕事の経験を通じてなされます。いわゆる「経験学習」です。目標を立て、やってみて、その結果を振り返って何かに気付き、その学びを次の目標設定やアクションに生かすというサイクルを繰り返すことによって、成長が促されます。環境変化が短サイクル化している今日、経験学習のサイクルもそれに合わせて短い期間で回していくことが必要です。しかし、目標管理制度上のサイクルは年次や半期に固定されていて、現実の経験学習サイクルと合っていません。その結果、目標管理制度が人材開発にあまり役立たなくなってしまっているのです。

上意下達の代わり映えしない目標

 成果主義人事の前提となっているウォーターフォール型の目標管理では、全社の売り上げや利益目標を達成することが大命題となっています。そこでは毎年、前期比3パーセント増といった目標を上から下にブレークダウンしていく目標設定が行われていますが、そのことが引き起こしている悪影響は小さくありません。

④ビジョンへの関心の希薄化

 毎年、代わり映えしない目標が降りてくることによって、全社の目標に対する関心が薄れてしまいます。たとえ素晴らしい企業ビジョンを掲げていても、従業員には毎年の目標を達成した延長線上にビジョンがあるようには感じられず、どこか白けた雰囲気が強化されてしまいます。その結果、全社目標の達成にぜひとも貢献したいという意欲がかき立てられず、自分の目標だけを追っていればよいという個人主義的な意識が強化されてしまいます。その意識は他者とのコラボレーションの妨げにもなります。

⑤ゴール設定力の弱体化

 目標が常に上から降りてくることによって、従業員は受け身の姿勢となり、仕事は与えられるものという意識が強化されてしまいます。中間管理職も上位目標の中継役となってしまって、自分のチームの目標を自ら設定する経験が不足するため、ゴール設定力が鍛えられません。既にビジネスモデルが確立したレガシービジネスならともかく、スタートアップビジネスにおいては自分でゴールを設定しなければ誰も決めてはくれません。また、組織のゴールを示してかじ取りを行う経営者人材が育たず、将来的な経営力の低下を招いてしまうリスクが高まってしまいます。

達成度による評価

 部門や職種が違えば成果の内容も異なるため、人の成果を一律的に比較することができません。それでは全社的な相対評価が困難であることから、大半の企業においては目標の達成度が成果測定の共通指標として設定されています。この達成度による評価が重大な問題を引き起こしています。