本連載ではこれまで、成果主義人事はビジネスモデルが確立したレガシービジネスにおいて、目標達成を外発的に動機付けるためのシステムであり、VUCA環境で新しい価値を創造するスタートアップビジネスには適さないことを述べました。国内人口の減少に伴って市場規模が縮小する状況において成果主義人事を維持し続けることは、企業にとって大きなリスクであるといえます。組織がますます疲弊するだけでなく、今後の成長領域の芽が育たないからです。

 さらに当のレガシービジネス自体にも、今後、デジタル社会の波は押し寄せてきます。ビジネスモデルが確立しているということは、AIやロボットで置き換えたり、インターネット上にビジネスそのものを移したりできる余地が大きいからです。そうなると、人を外発的な目標管理で動機付ける必要性そのものがなくなります。それは、さほど遠い未来の話ではないでしょう。

 今回は成果主義人事の問題点をより具体的に述べたいと思います。繰り返しますが、ここで成果主義人事と呼んでいるのは、期初に目標を立て、期末にその達成度を測定し、その結果によってレーティング(A・B・Cなどの格付け)を行い、レーティングに基づいて昇格や賞与を決めるシステムのことを指しています。以下に成果主義人事の12の問題点を掲げます。チェックリストとして用いて、皆さんの会社で何項目が該当するかをぜひ確認してみてください。

サイクルの固定化/リードタイムの長さ

 従来の目標管理制度では、年次や半期といった会計年度に合わせて目標設定と評価が行われますが、そのような時間軸の固定化による問題点が大きくなっています。

①環境とのかい離の拡大

 多くの企業において目標は年次や半期で固定化されていますが、実際のビジネスの環境は企業の会計年度で変化するわけでないことはいうまでもありません。短サイクルの環境変化のなかで成功確率を高めるためには、変化に合わせて機敏に軌道修正を行っていくことが必要です。ところが、環境が変わろうとも当初立てた目標をやり抜くことが優先されてしまうと、企業活動は市場の変化からかい離してしまいます。そのかい離が大きくなるほど、組織にひずみが生じます。売り上げの架空計上やデータの改ざんといった不祥事が、目標管理によって誘発された例も少なくありません。

②期中の支援の不足

 大半の企業では、上司と部下による目標管理の面談を期初、中間、期末のタイミングで実施することをルールにしています(その面談すら形骸化していることも少なくありません)。目標管理を行うことの目的は個人のパフォーマンスを向上することであるはずですが、個人のパフォーマンスは期初や期末ではなく、期の途中の日常的な仕事を通じて向上するものです。つまり、現状の目標管理制度では入口と出口の面談だけで、肝心の期中における1対1の面談によるパフォーマンス向上支援が欠けていることになります。その結果、目標管理が個人のパフォーマンス向上にあまり役立っておらず、そのことが面談の形骸化を招く原因にもなっています。