ウォーターフォール型とアジャイル型の違い

 VUCAの環境において、スタートアップビジネスを伸ばすために求められるのは、アジャイルな(機敏な)マネジメントです。どうすればうまくいくのかが不明瞭であるため、仮説を立てて、やってみて、その結果を踏まえて、次のアクションを考えるといった、実験と検証を繰り返すマネジメント方法が必要とされます。上から「こうすればうまくいく」と正解を伝えることはできないので、現場で一人ひとりが考えながら行動しなければならないのです。

 ウォーターフォール型とアジャイル型マネジメント方法には、以下のような基本的考え方の違いがあります。

●アウトプットの量ではなくアイデアの質を重視する

 ウォーターフォール型のマネジメントが行われている企業で非常によく目にするのが、「対前年比、売上3%増」といった目標設定です。市場の規模が拡大していないなかで3~5%増であってもストレッチ目標ですが、3%成長程度の目標では根本的な発想の転換はなかなか起こりません。多くの場合、3%分インプットを増やしてアウトプットを増やそうとする行動が強化されます。その証拠に、成果主義人事が導入されてからの過去20年間、日本人の平日1日当たりの労働時間は少しずつ延び続けています。

 スタートアップビジネスにおいては、いうまでもなくインプットを増やしたからアウトプットが拡大するという関係は成り立ちません。量の問題ではなく、アイデアの質が重要だからです。同じ行動をたくさん行うことよりも、「次はこうしてみよう」「別のアプローチもあるのではないか」と、視点や角度を変えながら様々なアイデアを試す姿勢が必要です。また、その前提として、一人ひとりが自分の意見を自由に発言できる環境が不可欠となります。「こんなことを言ったら批判されるのではないか」とリスクを感じるような環境では、自分のアイデアを安心して話すことはできません。

 ウォーターフォール型マネジメントにおいては、皆が同じように考え、同じように行動することが奨励されるため、異なるアイデアは排除されがちです。一方、アジャイル型マネジメントにおいては、イノベーションを起こすために、多様な視点や価値観が尊重されるカルチャーが構築される必要があるのです。

●失敗を回避するのではなく失敗から学ぶ

 ウォーターフォール型マネジメントにおいては、所与の目標を確実に達成することが最大の命題となるため、目標達成を妨げる「失敗」を回避する行動が促されます。そのため、成功確率がよく分からないビジネスチャンスは無視され、リスクを取らない安全志向のカルチャーが強化されます。ウォーターフォール型マネジメントの浸透した組織で、部下が何かに「チャレンジしたい」と言った時、「責任を取れるのか」と上司に諭されるような場面がよく見られるのはその一例です。

 実験と検証を繰り返すスタートアップビジネスにおいては、何かをやってみた際に、うまくいくことよりもうまくいかないことの方が多いのが当たり前です。「うまくいかないかもしれないから何もやらない」という姿勢からは成果が生まれません。そのため、失敗を回避するのではなく、いかに素早く効果的に失敗から学ぶかが重要となります。

 アジャイル型マネジメントでは、本人がアクションの結果を振り返り、何がよくて何が課題かに気付くための「リフレクション(内省)」を促すことが求められます。仮説を立てて、実行し、その結果から学ぶプロセスが経験学習です。変化が短サイクル化している環境において、経験学習のプロセスも短サイクル化しています。そのため上司には、頻繁なフィードバックを通じて、部下の経験学習を支援する役割が求められるのです。