期初に目標を設定して、期末にその達成度に基づいてレーティングを行うという従来の成果主義人事の方法は、レガシービジネスにおけるマネジメントモデルを前提としています。ここでいうレガシービジネスとは、既にビジネスモデルが確立されたコア事業のことを指しています。レガシービジネスにおいては顧客市場も、ビジネスの成功の方程式(成功要因、戦い方)も確立されているので、将来がある程度は予見可能であり、従来の目標管理・評価の方法が成り立ちうるのです。

 過去における正しいビジネスの進め方とは、まず中長期の経営計画を作成し、それに基づいて年度の事業計画を立て、事業計画に定められた全社の目標を部門、チーム、個人へと滝(=ウォーターフォール)のようにブレークダウンして、各個人に実行させることでした。その実行を徹底させるために、目標の達成度によって評価するという手法が採用されたのです。その前提は、経営計画を着実に実行すれば業績が向上するという図式が成り立つことであり、さらに前提として、そもそも将来の経営環境が予見可能という条件がありました。

 VUCAの進展とともに、こうしたウォーターフォール型マネジメントは機能しづらくなっているのです。

ウォーターフォール型マネジメントは企業の成長を阻害する

 しかし、日本の大企業の多くは、現在でも国内市場におけるレガシービジネスに依存しています。海外売上比率はかなり高まっていますが、まだまだ国内市場からの売り上げ、利益のウエイトが大きく、何よりも日本人従業員の大多数が国内のレガシービジネスに従事している状態にあります。国内市場は既に飽和しており、人口減少とともに今後、徐々に縮小していくことは周知の事実ですが、その縮小のスピードが緩やかであるため、なかなか変革への危機感が高まりません。

 その一方で、新たなイノベーションが必要とされるスタートアップビジネスにおいては、従来の目標管理のやり方でマネジメントを行うことが困難です。ここでいうスタートアップビジネスとは、ビジネスの成功の方程式自体をこれから作っていくことが求められる事業を指しています。それらは今後の成長が可能な領域ですが、ビジネスモデルが確立されていないため、将来を予見することは困難です。

 VUCAの環境においては、期初に目標を立てて期末にその達成度で評価を行おうとしても、目標の前提条件自体の変動が激しく、不確実性が高いために、従来のような半期や年次で区切った目標管理が意味をなさなくなってしまいます。そのため、成果主義人事に基づく従来のマネジメント方法を続けていても、スタートアップビジネスはうまく立ち上がらず、いつまでたってもレガシー依存の状態から抜け出せません。その結果、企業は次第に衰退していく危険性を抱えてしまうことになるのです。