V(Volatility:変動の激しさ)は、変化の短サイクル化、スピードの加速を意味します。AIなどの技術進歩が典型例ですが、技術の進歩がさらなる技術進歩を生む状況が生まれています。昔から、企業が生き残るためには生物と同様に環境変化に適応することが不可欠であるといわれてきましたが、それがいよいよ待ったなしの状況になってきたといえます。

 グローバル人事の専門家に、欧米人のリーダーと日本人のリーダーの最大の違いは何かと尋ねると、意思決定のスピードが真っ先に挙げられます。日本企業では意思決定までに様々な関係者に配慮したり忖度したりするために、時間がかかってしまうことが少なくありません。しかし、VUCAの時代においては、環境変化と意思決定の乖離は命取りになりかねないのです。

 U(Uncertainty:不確かさ)は、想定できない結果が頻繁に起こることを意味します。代表例としてしばしば挙げられるのが、昨年のイギリスのEU離脱やトランプ大統領の誕生です。ビジネスの世界においても、想定外の結果が現実のものとなった事例は枚挙にいとまがありません。

 想定外の結果が生じるのは、裏を返せば事前の想定が強すぎることを物語っています。過去の成功体験やこれまでの社内における常識が強固であればあるほど、それ以外の可能性を想定できなくなってしまいます。従来のビジネス(レガシービジネス)における成功の方程式に安住するのではなく、新たな環境における新たな方程式を常に模索していなければ、想定外の結果は必ず起こってしまうのです。

 C(Complexity:複雑さ)は、文字通り企業経営において勘案すべき変数が、過去よりもはるかに複雑になっていることを意味します。グローバル化、技術の進歩、政治情勢の変化、新たな競合の出現、顧客ニーズの多様化など、企業経営において考慮すべき要素は多数に上り、それらが相互に関連し合いながら、しかも短サイクルで変化しています。

 シンプル・イズ・ベストという言葉がありますが、極めて複雑化した今日の企業を単純な方法論で経営するのは大変危険です。最適解を見いだすためには、多様な視点や多様な専門性が不可欠であるばかりでなく、それらの多様な人々が自分の意見を臆することなく発言できる環境が必要とされるのです。