昨年、『人事評価はもういらない』という本を出版して以来、数百社におよぶ企業の人事の方々に対して、このテーマでお話しをしてきました。多くの企業の実情を伺い、考えれば考えるほど、日本企業の成果主義人事は既に限界に達しているという確信が強まっています。実際に人事向けセミナーなどで成果主義人事の問題点をチェックしてもらうと、「すべて当社に当てはまります」と発言される参加者は少なくありません(成果主義人事の問題点については、本連載で執筆予定)。
人事評価はもういらない 成果主義人事の限界
松丘 啓司 著 / ファーストプレス / 1,620円(税込) / 160ページ

 ところが、それほど問題を抱えているのにもかかわらず、根本的な変革に踏み切る企業はあまり多くありません。その理由として、成果主義人事があまりにも組織に浸透してしまったため、組織の上から下まで染み込んだ固定観念からなかなか脱却できないことが挙げられます。一方で、人事部門では問題を認識しながらも、成果主義のなかでこれまで昇進してきた経営層を説得する自信がないという担当者も見られます。人事制度を企業に指導するコンサルタントの側が、従来の発想から脱却できていないという要因も見過ごすことはできないでしょう。

 大前提としてお断りすると、私は成果に基づく評価を否定しているわけではありません。多くの企業が採用している成果主義人事の方法論を問題視しているのです。その方法論とは、簡単に述べると、①年度または半期ごとに組織目標を個人目標に落とし込み、②その達成度を評価して点数化(レーティング)し、③レーティングの結果をもとに報酬や等級を決める、というやり方を指しています。

 本連載では、現状の成果主義人事のどこが、なぜ問題なのか、どのように変えていくことが必要か、という問いに対して、順を追って解説していきたいと思います。

成果主義人事は歴史的使命を終えた

 その昔、戦後の高度成長時代の日本企業には、確たる評価制度はありませんでした。右肩上がりの経済成長のもと、年功序列・終身雇用の制度によって毎年、社員の処遇が上がっていくため、わざわざ評価で差を付ける必要がなかったからです。経済成長が鈍化した70年代に入ってやっと、社員の能力開発への動機付けを高めるために、多くの企業が職能資格制度による評価を導入しました。しかし、経験を積めば能力が高まるという年功主義的な考え方がベースにあったため、評価の個人差はそれほどありませんでした。