大半の日本企業では年次や半期での目標の達成度に基づいて、個人の成績のレーティング(A・B・Cなどといったランク付け)を行っています。そのレーティングの結果を用いて、等級や報酬額が決定される制度を構築している企業も少なくありません。各人の処遇がレーティングという共通的な尺度によって決められるため、公平な仕組みのように感じられるかもしれませんが、レーティングと処遇を密接にリンクさせることによる弊害についてはあまり議論されることがないように思います。

 レーティング自体の問題点については、前回の「成果主義人事の12の問題点」で述べたとおりです。個々の問題点に関しては日本企業の人事の方々もかなり認識されていると感じます。しかし、レーティングに応じて処遇を決める制度を長年にわたって運用してきたためか、その仕組み全体が当然のことのように組織に浸透しています。

 多くのアメリカ企業がこの数年間で、年次や半期単位でのレーティングを廃止していますが、その話題になった時に人事の方々からいつも必ず尋ねられることがあります。それは「レーティングなしに等級や報酬をどうやって決めるのか」という疑問です。

 そもそも等級や報酬は何によって決定されるべきかを丁寧に考えていくと、レーティングはあまり必要でないことが分かります。今回は、等級や報酬の本来の決定方法を再確認しながら、レーティングを軸とした現行の成果主義人事制度の問題点を整理したいと思います。

業績重視の等級決定の問題点

 レーティングは年次や半期単位での短期業績に基づいて行われます。会社によっては、行動や能力の要素を組み込んでレーティングを決める制度を採用しているところもありますが、過去1年や半年といった期間における業績評価は必ず含まれ、中心的なウェイトを占めています。

 一方で等級の決定は本来、短期業績に基づいて行われるべきものではありません。「その等級に求められる役割や職務を果たすための行動ができるか」といった、能力やリーダーシップによって判断されるべきものです。

 どこの会社にも等級制度はあります。最近は役割等級制度を採用している会社が多いと思われますが、その制度では各等級の役割要件が定義されています。そこでは、等級の決定はその等級に求められる能力や行動面の要件が満たされるかどうかで判断されることになっています。

 しかし、等級の決定にレーティングが用いられることによって、短期業績に重きが置かれてしまいます。短期的に業績を上げたから昇級させるというのは、いわば「ご褒美」のようなものです。実際、過去にご褒美昇格を乱発した結果、今になってたくさんの問題を抱えてしまっている会社もあります。

 特にマネジャーへの昇進に関して、マネジャーになってからマネジメントの経験を積ませればよいと考えて業績重視で昇進させる会社もあります。しかし、そのような会社ほどマネジメントの教育機会が提供されないため、マネジメントできないマネジャーが大量に生まれるといった悲劇も生じてしまいがちです。

 業績と能力を総合的に評価するというのはもっともらしい考え方のように聞こえますが、異なる尺度をごちゃまぜにしてしまうため、そのレーティングが表している意味が分かりにくくなります。その結果、評価エラーの温床にもなってしまうのです。したがって、能力・行動面での評価と短期業績の評価は明確に分けて考えられるべきです。