松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 社長

 デジタル経済の進展などの急速な環境変化によって、ビジネスのあり方は大きく変わりつつあります。一昔前までは、しっかりとした中期経営計画を作成し、それに基づいて年次の事業計画を立て、事業計画を組織の末端まで落とし込んで実行することが教科書的なビジネスの進め方でした。しかし、今日ではそのような方法で成果を上げられる業界はごくわずかでしょう。将来の環境変化が非常に不透明であるため、計画どおりに物事が進むことの方がむしろレアケースだからです。

 将来が不確実であることを前提に考えるならば、刻一刻と変化する状況に対して機敏に(英語で言うと「アジャイルに」)対応する仕事の進め方が求められるようになります。そこでは、かつてのように上から降りてくる計画を待って行動するのではなく、現場における自律的な判断や学習が必要とされます。

 ビジネスと評価制度は表裏一体です。評価制度はビジネスを後押しするものでなければなりません。ところが、これまでの評価制度を前提としたパフォーマンスマネジメントでは、アジャイルなビジネスにそぐわないばかりか、むしろそれを阻害する要因にもなりかねません。そこで今回のコラムでは、ビジネスのアジャイル化を後押しするためのパフォーマンスマネジメントのあり方について考えたいと思います。

実験と検証を繰り返す

 こうすれば業績を拡大できるという成功の方程式が不明確な状況では、現場における実験と検証を繰り返すことによって、経験学習を積み重ねていく仕事の進め方が求められます。何らかの仮説を立て、行動してみて、それに対する市場の反応を確認・分析し、次のアクションに活かすという一連のプロセスが、短サイクルで、かつ臨機応変に実施されなければなりません。

 それに従って、仕事における目標設定と振り返りも短サイクルで臨機応変に行われる必要があります。しかし、ほとんどの企業における評価制度では、目標設定と振り返りは年度(または半期)で行われています。その結果、評価制度における目標と現場の実態に齟齬が生じるだけでなく、報酬に直結する年度目標の達成が優先されることで、本来、必要とされるアジャイルな仕事の進め方が阻害されてしまう恐れがあります。

 これからのパフォーマンスマネジメントにおいては、年度目標の達成度で評価を行うという概念が払しょくされなければなりません。年度目標によって行動を縛られるのではなく、現場における実験と検証のサイクルが効果的に機能することを優先したパフォーマンスマネジメントへの転換が必要とされています。