強み重視

 組織内における人材の同質性が薄れてきたことによって、画一的な基準で多様な個人を評価することの困難さがますます増しています。特に、相対評価でA・B・Cといったレーティングを行うためには画一的な尺度が不可欠ですが、人材が多様化したことによって評価エラー(誤った評価)が多発する結果になります。

 また、個人の評価を数値化するレーティング自体が、成長意欲を減退させるということも分かってきています。個人と組織のパフォーマンスを高めることがパフォーマンスマネジメントの目的ですが、レーティングがそれに役立っていないばかりか、むしろ害をもたらしているとすると、何のためのパフォーマンスマネジメントか分からなくなってしまいます。

 そのため、個人と組織のパフォーマンス向上という目的に主眼を置くのであれば、個々人によって異なる「強み」を最大限に発揮させることが得策と考えられはじめています。そこで年次評価を廃止した企業では、一人ひとりの強みのアセスメントを実施して、個人を横並びで比較するのではなく、各人のベストの能力が発揮されるように促すことが奨励されています。

コラボレーション促進

 年次評価におけるA・B・Cというレーティングは、各人を競わせることによってパフォーマンスを高めるという発想に基づいていました。しかし、競争を促進するレーティングは個人の意欲を減退させるだけではなく、メンバー間の連携(コラボレーション)をも阻害する結果を招いています。他の人に対して何かの貢献をしても、自分の得にならないばかりか、むしろ損をしかねないからです。

 ところが、今日のビジネスにおいては、組織のパフォーマンスに占めるコラボレーションの比率がますます高まっています。一人ひとりが閉じて仕事をするのではなく、相互に貢献し合いながら仕事の成果を生み出した方が、ずっと高い成果が得られることが分かってきているのです。

 年次評価の廃止によって組織から競争の危険が除去され、心理的安全が高められます。心理的安全は自由に意見を言い合い、相互にフィードバックし合うための組織的な前提となります。新たなパフォーマンスマネジメントを導入した企業においては、ITツールなども活用しながら、リアルタイムかつ相互にフィードバックを行い合うコミュニケーションの活性化が推進されているのです。

松丘啓司氏の新刊
『人事評価はもういらない‐成果主義人事の限界』
ファーストプレス、2016年10月
松丘 啓司(まつおか・けいじ) エム・アイ・アソシエイツ株式会社 代表取締役
松丘 啓司

 1986年東京大学法学部卒業後、アクセンチュア入社。同社のヒューマンパフォーマンスサービスライン統括パートナーを経て、2005年に企業の人材・組織モデル革新を支援するエム・アイ・アソシエイツ株式会社を設立。同社ではパフォーマンスマネジメント、ダイバーシティ&インクルージョンなどの領域を中心にサービスを提供。主な著書として、『人事評価はもういらない』『論理思考は万能ではない』『アイデアが湧きだすコミュニケーション』『ストーリーで学ぶ 営業の極意』『提案営業の進め方』『組織営業力』などがある。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。