松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 社長

 個人や組織のパフォーマンス(業績)が高まると年次評価の成績が上がり、年次評価の成績が上がると報酬も上がるというのが、これまでのパフォーマンスマネジメントで想定されていた因果関係です。この因果関係をベースにすると、報酬を上げるためには年次評価を上げることが必要で、年次評価を上げるためには個人や組織のパフォーマンスを高めることが必要になります。

 ところが、実際にはこの因果関係どおりにいきません。年次評価の存在がパフォーマンスの向上を阻害するという逆の作用が起こってしまっているからです。人事の議論において、きちんと評価を行わせることが最大の目的のように考えられることが少なくありませんが、パフォーマンスマネジメントの本来の目的は、個人と組織のパフォーマンスを高めることにあります。評価を厳格に行うことによって、パフォーマンス向上という本来の目的が損なわれてしまっているのであれば本末転倒です。

 だからといって、年次評価を廃止すればすべてが解決するわけではありません。そもそも、パフォーマンス向上を促進することができるマネジメント方法が必要です。今回のコラムでは、年次評価を廃止した米国企業が実践している新たなパフォーマンスマネジメントの5つの基本原則について解説します。

リアルタイム

 年次評価における「年次」という時間軸が、ビジネスの現場の実態と合わなくなっています。現場の業務はもともと年度単位では動いていないことに加えて、ビジネスのスピードが速くなったことにより、年度という期間は目標設定とフィードバックの時間軸としては長すぎるのが実態です。そのような環境のもとで、評価面談の際に上司から半年前、1年前のことをフィードバックされても気づきが得られず、フィードバックの効果も限定されてしまいます。

 パフォーマンスマネジメントにおける目標設定とフィードバックの本来の目的は、仕事を通じた個人の学習をより効果的に促進することにあります。それによって、継続的なパフォーマンスの向上が可能になるからです。仕事のサイクルがより短くなっている状況においては、個人の経験学習もより短サイクルで行われる必要があります。

 年次評価を廃止した企業においては、目標設定とフィードバックがより短サイクルで実施されています。これまでのように期初、中間、期末といった決まった面談のタイミングを待つのではなく、上司と部下の対話がより頻繁かつ継続的に(いわばリアルタイムで)行われることによって、仕事のサイクルと経験学習のサイクルの整合が取られているのです。