松丘啓司
エム・アイ・アソシエイツ(株) 社長

 欧米で一般的に用いられるパフォーマンスマネジメントという用語は日本ではそれほど広くは浸透していませんが、それはどこの会社にも存在するマネジメントです。パフォーマンスという言葉には、例えば自動車のパフォーマンス(性能)というように発揮される能力を表す意味と、投資信託のパフォーマンス(運用成績)というように結果としての業績を表す意味の双方が含まれています。能力と業績には因果関係があることから、パフォーマンスマネジメントとは、企業の業績向上のために個人と組織の能力発揮を促すマネジメントプロセスと定義することができます。

 パフォーマンスマネジメントは通常、目標管理・評価制度に基づいて運営されています。その制度の下で職場における上司と部下の対話がなされ、目標設定やフィードバックが繰り返されます。それは、職場運営の要となるマネジメントサイクルといってよいため、パフォーマンスマネジメントのあり方次第で、個人と組織のパフォーマンスは大きく影響されるのです。

 日本企業におけるパフォーマンスマネジメントは、これまでも時代とともに変化してきましたが、今まさに、さらなる変革が求められています。本連載では、パフォーマンスマネジメントの変革が求められる背景から、今後のパフォーマンスマネジメントのあるべき姿や事例、変革のための成功要因などについて順次、解説していきたいと思います。

年次評価廃止というグローバルトレンド

 日本企業における今日のパフォーマンスマネジメントの仕組みは、今から20年ほど前の成果主義人事の導入に端を発しています。それ以前の日本企業では、業績に応じて社員をA・B・Cとランクづけ(レーティング)するような評価制度はありませんでした。成果主義の考え方を導入するために、当時の日本企業はアメリカ式の目標管理・評価制度を一斉に採用しました。そのため、日米のパフォーマンスマネジメントの仕組みは、きわめて似通ったものになりました。

 ところが昨今、従来のパフォーマンスマネジメントの根幹にあった年次評価を廃止するアメリカ企業が増え続けています。年次評価がパフォーマンスの向上に役立っていないという認識が高まっているからです。これらの企業では年次での社員のレーティングを廃止して、以下のような、より「ヒト重視」のパフォーマンスマネジメントへの転換を図っています。

・年次サイクルではなく、よりタイムリーに目標設定とフィードバックを実施
・そのために、期中において頻繁に上司と部下の対話を継続
・全社目標を個人に割り振るのではなく、個々人が主体的に目標を設定
・画一的なマネジメントではなく、一人ひとりの強みの発揮を重視
・社員間の競争ではなく、コラボレーションを促進

 GE、マイクロソフト、アクセンチュアといった巨大なグローバル企業は、グローバルベースでこうしたパフォーマンスマネジメントの変革を遂行しています。それには多大な労力が必要とされますが、それほどの投資をしてまでもパフォーマンスマネジメントのあり方を刷新することの必要性が認識されているのです。