本稿第1回では、「環境変化で顕在化した、人財のギャップと育成方法の課題」を取り上げた。そして、第2回では「『他流試合に行ってこい!』のわな」として、数日間の公開研修に参加して他社精鋭に混ざり研さんすれば成長につながるのでは、という大きな勘違いを引用しながら、真に成果を出し成長につなげる研修企画には4つの視点を持つことが大切だと述べた。たくさんの質問や意見を頂いたことに深く感謝したい。

 さて、今回は、この4つの視点に適合した「1 on 1®(ワンオンワン)研修システム」の概要を紹介したい。成果と成長を促す研修企画のアイデアとして、今、1 on 1が多くの企業で注目を集めている。筆者が支援する企業においても急速にこの流れが進んでおり、本稿ではこのシステムがどのような研修形態なのかを解説したい。そして、次回の具体的な企業事例の紹介へとつなげる。

 まずは前回示した有効な研修企画のための4つの視点を振り返ってみたい。

4つの視点とは
●実務的な企画であること
●参加動機が継続すること
●組織が関与すること
●成果を追求すること
であった。

 これをあらためて眺めてみると、これらの視点は企画担当者であれば「当たり前じゃないか!」とか、「前からやっていますよ!」という声が聞こえてきそうである。しかし、振り返ってほしい。皆さんはそう考えたとしても、外部の研修会社がこのような視点で研修を実施し、支援してきたであろうか。

 私は、独立して研修ビジネスを行うのであれば、ほかがやらない個別支援を含めた研修を行いたいと常々考えていた。

 集合研修のみでは効果は限定される。人財が意識を変え、知識を吸収し、スキルを習得し成果を出すまでには相応の時間がかかる。また、研修に組織を関与させるといっても最終発表会に幹部が出席し、発言するのが関の山で、研修の実施過程での関与は弱いか、ほとんどないに等しい。これでは成果と成長は限定的である。大手研修会社ほど個別支援や組織関与への対応や調整など、手間がかかる支援は敬遠したいとの話もよく聞くところだ。この部分の強化を狙った。

 私は、企業研修の企画と実施の過程において、実務的な成果、受講者の成長と、組織の関与の度合いは正の関係があることを観察した。また、組織の関与が高まるほど、研修運営のシステムと事務局機能が大切であることも経験した。つまり、研修における成果の創出と受講者の成長を促すためには、受講者個別の支援と組織の関与を高める研修システムが必要なのだ。そのシステムこそがが1 on 1®なのである。

【1 on 1®とは何か】

 1 on 1とは、受講者、その上司、講師の三者で行われる経験学習の場である。経験学習の機会なくして人は育たない。経験学習の要素がなければ研修は効果を生まない。人は経験を通じて気づきを得て、意識と行動を変える。そこに上司の支援があればなおさらその可能性は高まる。講師はその環境を創り出すことと気づきを加速させる触媒である。

 他流試合の場で大先生の話を聴いたとしても、意識への影響はあろうが知識レベルで終わる。要は受講者がその機会に何を経験するかで研修の価値が決まるのだ。経験を通じた学習が唯一、成長の機会を創り出すのだ。