“通訳”だと思っていたおネェちゃんが、いきなり“統括マネージャー代理”になったのだから、特にマチスモ(男性優位主義)系の男性ワーカーの中には戸惑いの表情を隠せないものもいたが、そこは前年築き上げた信頼関係がある。ほとんどのワーカーが笑顔で応えてくれた。
おかげで、私は堂々と工場内を動き回り、指示を出すことができるようになった。

“不良”を“問題”と認識してもらう

“権限”を手に入れた私は、まず、統括マネージャーが収集しきれていない現場の情報を集めて彼女に届けることにした。

状況を把握してもらうために、パレッタイズセクションや出荷準備の時にクーラー(冷蔵倉庫)で見つけた不良事例を写真に撮ってレポートにし、毎日統括マネージャーに見せることにした。

数値データがどうのこうのの前に、そもそもどんな不良が出ているのかを統括マネージャーをはじめ、他のマネージャーたちも把握していなかった。
今までは、黙々と西海岸カーゴ社のスタッフたちがそれらの不良を修正してくれていたからあえて報告されることもなかった。もしチェック漏れがあって客先に不備のあるものが届いてしまったとしても、「じゃぁ、代替品送りますね」で済んでしまったのだ。
モーレツな忙しさの中では、目の前の仕事をこなすのに精一杯で、いちいち過ぎたことを振り返ってどうしてそんな不備が生じたのか原因究明をしたり、今後の改善策など考えている余裕はない。

まずは“不良”を“問題”と認識してもらうことからだ。不良を出しても、現場にフィードバックされないのでは、現場はいつまでも“問題”を認識しない。

“権限”をもらったからといって、アシスタントがついたわけではない。
あくまで私ひとりで動かなければならないので、とにかく見つけられるだけの不良やミスの写真を撮ってレポートにした。

統括マネージャーは、私が毎日提出するレポートを、翌日の朝礼で生産ラインやパレッタイズなど、それぞれ関連する部署のチーフやワーカーたちに見せ、指摘した。

これまで「別にこれくらいいいだろう」と、たいして気にも留めていなかった、封印テープのはがれ、インクジェットの印字のかすれなど、“ちょっとしたこと”が、次々と“問題”として取り上げられるようになった。

不良やミスの数は、すぐに減ったたわけではないが、ワーカーの中に、どういうものが“不良”扱いになるのか、そして不良をそのまま出荷してはいけないのだ、という意識は芽生え始めた。

インクジェット印刷の不良(かすれ、位置のズレ)。不良事例の写真を撮って統括マネージャーに報告