証明できない功績

最初の頃から比べれば明らかに不良の数は少なくなり、パレットに積まれたカートン箱の不良やミスを修正するために、クーラーの中でパレットを崩してはカートン箱を上げ下ろしするというムダな作業の割合は減った。
けれど、それはあくまで“感覚”の話であって、比較できるデータがあったわけではない。

チェリー工場の社長やマネージャー層は、業務の効率や品質改善に対する意識が低く、特に梱包や出荷に関わる業務についてはほとんど無関心だった。
確かに、出荷業務に関しては西海岸カーゴ社に委託しているのだから「金は払ってる、後はそちらに任せた」という気持ちはあるだろう。

しかし、外装や梱包の不備でクレームが発生した場合、その処理やコスト負担をするのは西海岸カーゴ社だけではない。当然工場側にも影響は出る。むしろ一番被害を被るのは工場だ。
にも関わらず、驚くほどその意識は低かった。
今までそのコストを意識しなくてもやってこられたというのは、ある意味、羨ましいことなのかもしれないが。

営業の売上データを見れば、代替品の出荷コストや、クレームによる割引率などの数字は探せたのかもしれないが、特にそういったデータを分類したり、集計している様子もなかった。

西海岸カーゴ社も同様に、日々の出荷業務をこなすのが精一杯で、どんな不良がどれほど出ていたかなどを記録する余裕もなく、その必要性も感じていなかったようだ。

業務改善をしたことで、「不良率が下がった」、「クレーム処理のコストが下がった」など、わかりやすく数値で表せればいいのだが、なにせ前年までのデータや比較するものがなにもない。
関心がないのだから、そんな記録などとっていないのだ。

2013年のチェリーシーズンを終えたとき、心残りだったのが、具体的なデータで結果を表せなかったことだった。
西海岸カーゴ社の社長やスタッフ、チェリー工場のワーカーたちやマネージャー層からも「一緒に仕事ができてよかった」「新しい世界が見えた」など、嬉しい言葉をかけてもらったが、できることならそれを何かしらの数値で証明できたなら、ワーカーたちも“感覚”だけでなく、自分たちの力にもっと自信がもてるようになったのではないかと思った。

実証データはなくても、それなりの変化や功績を感じてくれたのか、翌2014年のチェリーシーズンが近づくと、また西海岸カーゴ社の社長から「今年は本格的に業務改善やワーカーの教育をやって欲しい」という依頼が来た。