上からでも見下ろさない

洗浄から選別にかけてのセクションの上には“空中通路”があり、マネージャーたちが、上から全体を監視していた。全体を見渡すことができて、トラブルがあればすぐにわかる。

ある日、選別のおばちゃんたちと並んで一緒に作業をしていると、おばちゃんの一人から

「Miwaは下に降りてきてくれるのね。
他のマネージャーたちは上から見下ろしているだけで、下には降りてこないわ。
だからMiwaは、他の人とは違うと思う。」

と言われた。

実際にワーカーと同じ目線に立って、同じ作業空間に立ってみなければ、ワーカーたちとコミュニケーションを取ることも、その仕事を理解することも、新しい発見をすることもできないと思っていたから、私にしてみれば、一緒にラインに立って作業をするのはごく自然なことだった。

選別のおばちゃんたちから仕入れた様々な情報は、上の空中通路から見ていたのでは計り知ることのできない、同じ目線に立っていなければわからないことばかりだった。

けれど、確かにマネージャークラスが作業場に降りてくることはめったになかった。
そこには自然と見下ろす者と見下ろされる者の位置関係ができてしまっていた。

確かにラインの制御システムなども空中通路上にあったし、業務上、マネージャー層が全体を一望できる場所にいることは大切だ。
別に威圧感を与えようとして見下ろしているわけではないだろう。
けれど物理上、やはりワーカーたちに“見下ろしている”という印象を与えてしまいがちなのも事実だ。

私も空中通路の上からライン全体を見学したりすることはあったが、なるべく“見下ろしてる”感が出ないよう、ワーカーと目が合えば笑顔で返し、時に手を振ったり、声をかけたりした。

“見下ろしてる”のではなく、“見守ってる”と思ってもらえるよう、同じ目の高さにいる時より意識して、優しい視線を投げかけた。

選別ラインにある空中通路
井ノ上 美和(いのうえ・みわ) BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会) ナビゲーター、ジョーシス 顧問
井ノ上 美和

メキシコ、スペイン在住歴6年のラテン系。
通信ベンチャー、医療用具メーカーなどの国際ビジネス業界で、オペレーション・営業のマネジメント、採用・社員教育、ISO/FDAの品質監査、広報、システム構築など、様々な業務に携わった経験を活かし、海外および国内企業で業務・組織改善、人財育成などのコンサルティングや研修を行う。
学習院大学、HAL東京などの教育機関や大手IT系企業を中心に、人生観や生き方をテーマにした講演会も展開。
スペイン語の通訳翻訳業では、ビジネス通訳のほか、フジテレビ「奇跡体験!アンビリバボー」などメディア出演も。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。