このチェリー工場に限らず、業務の効率化や品質改善を特に気にしなくても、そこそこお金が入ってきている企業では、改善や現状打破という意識が低くても仕方がない。
「このままではいけない」と思ってはいても、本当にお尻に火がつかないと、動き出せないものだ。

インクジェットの印字のミスが出ても、あとから人手を使って、カートン箱を差し替えたり、ラベルを貼り換えたりすればいいだけで、労働力や材料費、つまりお金と時間をかければ、どうにかなる。
最悪、不良品が客先に届いてしまったとしても、謝罪メールを送り、代替品を送ればいいだけのことで、場合によっては、プラスアルファのおまけをつけたり、ちょっと値引きしてあげたりすればいいのであって、これもお金と時間をかければどうにかなる。

ある程度の取引量があったり、ビジネスが固定化、習慣化していればなおのこと、ちょっとやそっとの不良やミスでは、即取引中止ということにはならないから、余計だらだらとそのままの状態が続く。

現場は、とりあえず目の前の業務をこなすだけで精一杯だし、とにかく1カ月半、日々の業務をこなしていればどうにかなる。ある程度稼げてしまうのだ。
それ以上、何かをする必要性は感じないだろう。

ミスの埋め合わせをするだけのお金と時間がある限り、業務の効率化や品質改善に真剣に取り組むことは難しい。

マネージャーやチーフが本気でなければ現場を巻き込めない

仮に、私がマネージャーとチーフクラスの人だけに、品質改善と業務効率化の話をして、だから今のままのやり方ではダメなのだと、改善策の指示を出したとしよう。
それを受けて、マネージャーやチーフが、突然ワーカーたちに対して、「もっと品質に気を配れ」だの、「業務の効率化を考えろ」、「やり方を変えろ」と言ったところで、言われたワーカーの方は、「ぽっかーーーーーーーん…」である。

「なんでいきなりそんなこと言い出すんだ」「今までそんなこと言わなかったじゃないか」「余計な仕事を増やすな」「それをやったら、いくら給料が上がるんだ」そんな声があがるだけだ。

残念ながら、マネージャーもチーフも、そんなワーカーたちの質問に対して、なぜそんな変化が必要なのかを、きちんと説明することはできないだろう。
彼ら自身も今まで通りやっていればいいと思ってきた人たちだ。