ところが、彼女は悪びれた様子もなく

「もうしないから」

とだけ、サラリと返してきた。
でも、「もうしない」と言って、本当に「もうしない」ことなどまずない。

もう一度、なぜミスが起きたのかと聞くと、彼女は

「なんで起きたのかなんて知らないけど、もうしないって言ってるんだから、それでいいでしょ!」。

と声を荒げた。

そんな子供みたいな返事が返ってくるとは思わなかったから、一瞬面食らったが、

「理由がわからないのに、どうして“もう起きない”なんて言えるの?
理由がわからなかったら、対処のしようがないでしょ?」

と、私は極力笑顔で、話しかけた。でも、その笑顔はかなり引きつっていた。

準チーフクラスのワーカーが、こんな考え方だから、私たちの極寒のクーラーの中での夜中まで続く肉体労働は、なかなか楽にならないのだ。
本来ならやらなくてもいい作業のために、疲弊する。

ここでCAPA(Corrective Action & Preventive Action: 是正処置および予防処置)の講義を始めようなんて気は全くないし、彼女のミスを責め立てる気もない。
ただ、一緒に問題意識を持ってもらいたかった。
「なんでこんなミスが出たんだろう?」と考えて欲しかった。

けれど彼女は

「もういいでしょ!」

と不機嫌さ全開で、顔を背けた。
おそらく、今までこんな質問を受けたこともなかったのだろう。
単に自分のミスを責められる“尋問”に感じたのかもしれない。

すると、そこに品質管理のマネージャーがやってきた。
背の高い白人のアメリカ人で、今まで工場内で何度か顔を合わせたことはあったが、正直、最初からあまり好意的な印象ではなかった。

彼は私に近づくなり、

「そんなこと、直接ワーカーと話すな!」

とかなり強い口調で言ってきた。

「そもそも通訳ごときのオネェちゃんが口を挟むことじゃないし、勝手にワーカーに指導や指示をするな、品質に関してのことは品質管理マネージャーである自分が担当する」というのが彼の言い分だった。

確かに、指示命令系統を考えれば、彼の言い分も正しい。
けれど、「それもそうですね」と言って引き下がれるほど、私は大人しくなかったし、納得もしていなかった。