普通なら(少なくとも私が他の生産工場で見てきた限りでは)、製造指示書などの内容に従ってインクジェット機に表記内容をプログラムした後、何度かトライアルの印刷をして、表記の内容やインクのコンディションを確認してから本生産をスタートさせる。
製造現場を知っている方ならおわかりだろうが、それがごく一般的な当たり前の手順で、そうした手順をきちんと踏んでいれば、こんなケアレスミスは発生しないはずだ。
けれど、このチェリー工場では、トライアル印刷や指示書との照らし合わせなどはなく(もしくは、手順が徹底しておらず)、当然のようにミスが発生した。

タイミングの悪いことに、この時生産ラインはフル稼働で、箱詰めされたカートン箱が絶え間なくベルトコンベアの上をひしめき合って流れてくる。
ここでインクジェット機を止めたら、あっという間にインクジェット機の手前でベルトコンベアからカートン箱が溢れ落ちてしまう。
仕方がないので、次の休憩時間にラインが止まるまで、間違った印字のまま製品を流し、一旦、製品をパレットに積み上げて、後からまとめて全部ステッカーを貼って修正する、ということになった。

つまり、また、パレットに積まれたカートン箱の上げ下ろし作業をするのだ。
場合によっては、例の極寒のクーラー(冷蔵倉庫)の中で。ステッカー貼りの時は、手袋をしていると作業ができないので、素手でやる。約0℃のクーラーの中だ。あっという間に指先がかじかんで、動かなくなる。その指を無理やり動かしながら作業をするのだ。

インクジェット機をすぐに止められないのもわかる。
だからと言って、この状況を野放しにしておくことはできなかった。 これまでにもインクジェットのミスや不良は何度となくあったが、まずはパレッタイズや封印テープ貼りの工程から徐々に改善しようと思っていたから、この時までそれほど強くミスや不良について追求したことはなかった。
システムが絡んでいたり、インクジェット係のやや高飛車な態度も、インクジェット工程への“手入れ”が遅れた理由だった。

けれど、ここで発生したミスをフォローするために、極寒のクーラーの中で修正作業をし続けるのは、時間と労力のムダ使いだということに代わりはない。
そろそろやらなければ。

さぁ、火蓋を切るぞ

私はインクジェット係の女子ワーカーに

「どうしてこんなミスが起きたの?」

と尋ねてみた。
最初のプログラムの入力を間違えたのか、それともシステムにバグが発生したのか。再発を防ぐためにも、今回どうしてこのようなミスが起きたのか知る必要があった。
“普通”の手順でやっていれば、起こるはずのないミスだ。