作業の指示や注意をする時も同じことが言える。

パレッタイズのワーカーに、ただ「封印テープに不良があるカートン箱をパレットに載せちゃったら、それはあなたたちの責任だよ」と、仕事の役割分担について説明したり、テープ係に「封印テープをきれいに貼ってね」と言っているだけでは弱い。

なぜ、そうする必要があるのか、をストーリーとして理解していなければ、頭と行動が結びつかず、自発的な行動につながらない。

「封印テープが貼ってなかったり、剥がれかけてたりすると、日本の通関でダメ出しされて輸入の許可がおりないんだよ。
日本の通関ってすごく厳しいから、ちょっとでもダメなものはダメなの。

輸入できなければ、当然お客さんにお金を払ってもらえないでしょ。
中身のチェリーはちゃんとしてても、テープひとつで、皆の仕事がムダになっちゃうんだよ。
お金をもらえないどころか、焼却処分になるから、その費用もこっちで負担しないといけなくて、マイナスになっちゃう。処分の費用って、チェリーの代金より高いんだよ。

当然お客さんにも迷惑かけるし、あんまりミスが多いと、値段下げろって言われたり、来年はもうあそこと取引するのはやめようって話にもなりかねないよね。
そんな仕事してたら、お給料もあがるわけないよね」

そこまで話をすれば、なぜ封印テープをきれいに貼らなきゃいけないのか、封印テープのコンディションを丁寧にチェックしなければいけないのか、仕事の意味や役割、自分との関連性が見えてくる。

西海岸カーゴ社(仮名)のスタッフは、通関でのチェックの厳しさやクレームを出した時のリスクについて当然知っていたけれど、パレッタイズやテープ係など他のセクションのワーカーはほとんど知らなかった。

たかがテープ貼り、たかがパレッタイズではない。
ラインで仕事をしている限り、“たかが”なんて仕事はない。

それぞれが一つひとつの工程をきちんとこなして、やっと完成するのだ。
全体から見たら、小さなプロセスかもしれないけれど、そこでのミスやいい加減な仕事は、全体に影響を及ぼす。

それをきちんと理解してもらうには、全体像のイメージが描けるような情報を伝え、自分たちが全体の中のどのポジションにいるのか、役割はなんなのかを教えてあげなければいけない。

それぞれのチームの役割を明確にすることで、自分たちの仕事は単なる前工程から次工程への経由地点ではなく、重要なプロセスの1つなのだと認識できる。
一人ひとりが自分の役割の重要さを実感し、責任を持って仕事をこなせるようになるし、チーム間の連携も高まる。

今までの、やらされ感いっぱいの仕事から、“自分だから任されている仕事”へのチャレンジに気持ちが変わっていく。

目の前にある自分の作業の話だけでは、チームワークはもちろん、責任感やモチベーション、自発的な行動は、生まれてこない。

井ノ上 美和(いのうえ・みわ) BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会) ナビゲーター、ジョーシス 顧問
井ノ上 美和

メキシコ、スペイン在住歴6年のラテン系。
通信ベンチャー、医療用具メーカーなどの国際ビジネス業界で、オペレーション・営業のマネジメント、採用・社員教育、ISO/FDAの品質監査、広報、システム構築など、様々な業務に携わった経験を活かし、海外および国内企業で業務・組織改善、人財育成などのコンサルティングや研修を行う。
学習院大学、HAL東京などの教育機関や大手IT系企業を中心に、人生観や生き方をテーマにした講演会も展開。
スペイン語の通訳翻訳業では、ビジネス通訳のほか、フジテレビ「奇跡体験!アンビリバボー」などメディア出演も。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。