改善策は“楽”であること

ラッシュ時になると、“先頭係”ひとりでは、すべての箱の向きを揃えて、インクジェットや封印テープのコンディションを確認して、2段積みにして… という作業が追いつかない。
すると、“先頭係”のすぐ後ろにいたワーカーが、自発的に私のマネをして、“サブ先頭係”をしてくれるようになった。

私がパレッタイズのセクションにいない時でも、他のワーカーが“先頭係”になって、箱の向きを揃えたり、「来るよーーーーーー!」の声がけをしている姿を見たときには、とても嬉しかった。

“先頭係”が定着した!

私が始めた“先頭係”の作業は、いたって簡単なものだった。
“小柄で細腕のおネェちゃん”でさえできてしまう、ちょっとしたことばかり。 だからこそ、ワーカーたちも

「こんなことなら、オレたちにもできる」

「確かにこの方が楽だ」

と、ついてきてくれたのだ。

改善策は、“楽”でなければいけない。
“楽”を実感できなくては、続けてもらえない。

改善策を導入するのに、やたらと時間やお金がかかったり、ましてや実行すると負担が増えるというのでは、意味がない。

読者の中には、ベルトコンベアの先頭で箱の向きを揃えるとか、事前に来る商品を教えるとか、それくらいフツーに思いつくでしょ、という人もいるだろう。

けれど、“フツーに思いつく”のは、あくまで、自分の“仕事”がなんであるかをきちんと認識している場合だ。

単に「“カートン箱をパレットに積む”のが自分たちの仕事だ、インクジェットや封印テープのコンディション、混載がないかどうかのチェックは出荷担当の日本人チームの仕事だろ」と思っているワーカーが、“フツーに思いつく”のは難しい。

確かに“先頭係”やみんなの声出しのおかげで、作業効率は上がったし、不良品を見逃したり、混載のミス等も少なくなった。
けれど、それが定着したのは、品質改善がどーのこーのより、単に自分たちの作業が楽になったから、という要素の方が大きい。
それぞれがぐるぐるカートン箱を回転させたりするより、あらかじめ向きの揃った箱が流れてくる方が楽だし、先に2段積みになっていた方が楽だ。
粗っぽいチーフの「パレーーーーーーーッ!」の声だけより、明るい声でみんなで声がけする現場の方が雰囲気も楽しい。

でも、それだけでは自分たちの“仕事”をしていることにはならない。 次なる課題はそこだ。

井ノ上 美和(いのうえ・みわ) BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会) ナビゲーター、ジョーシス 顧問
井ノ上 美和

メキシコ、スペイン在住歴6年のラテン系。
通信ベンチャー、医療用具メーカーなどの国際ビジネス業界で、オペレーション・営業のマネジメント、採用・社員教育、ISO/FDAの品質監査、広報、システム構築など、様々な業務に携わった経験を活かし、海外および国内企業で業務・組織改善、人財育成などのコンサルティングや研修を行う。
学習院大学、HAL東京などの教育機関や大手IT系企業を中心に、人生観や生き方をテーマにした講演会も展開。
スペイン語の通訳翻訳業では、ビジネス通訳のほか、フジテレビ「奇跡体験!アンビリバボー」などメディア出演も。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。