とにかく“笑顔”で“挨拶”

「どうやって、メキシコ人ワーカーの心を開いたんですか?」

この一件を私の講演会で話すと、聴講者からよく聞かれる質問だ。
答えはシンプル。

「とにかく“笑顔”で“挨拶”です」

「そんなことですか?」

「そんなことです」

聴講者は、もっと高度な“何か”を期待していることが多い。
けれど、たいてい、物事はいたってシンプルだ。
しかも、“そんなこと”すらできていないことの方が多い。

日本の管理職のおじさまたちと話をしていると、「最近の若いモンは、まともに挨拶もできない」と憤慨する声をちらほら聞く。

朝、オフィスに入っても、部下が「おはようございますっ!!」と挨拶をしてこない、というのだ。

もし、上司が「おはよう」と声をかけているのに、「おはようございます」と部下から返事が返ってこないのだとしたら、それは問題かもしれない。

けれどよくよく話を聞いてみると、そうではない。
自分がオフィスに入ったら、若いものはそれにすぐに気がついて「おはようございます」と上司に対して先に挨拶をしてくるのが当然だろう、こちらから声をかけないと挨拶できないようではダメだと、そういう話らしい。

自分からは「おはよう」と声をかけないのに、どうして自分には「おはようございます」と声をかけてもらえると思うのだろう?

挨拶は、「私はあなたの敵ではありませんよ」という意思表示だ。
これは国や宗教を問わない。ハ〜イと手をあげたり、握手をしたりするのは「武器を持っていませんよ」と相手に示す行為。

挨拶をこちらからしないというのは、つまり「お前の出方次第では、オレはお前の敵になる」もしくは「オレはお前の敵だ」と言っているようなものだ。
こちらが敵意を示しているのに、相手が笑顔で近寄ってきたり、心開いてくれることがあるだろうか。

こちらから元気に笑顔で「おはよう」と声をかければ、相手がなにも返してこないということはまずない。本当に敵対している関係か、嫌がらせをしているでもいない限り。
まずは自分からアクションを起こせば、距離は自然と縮まる。

私はかなり意識して、ワーカー全員に声をかけた。
3本あるベルトコンベアをそれぞれまわり、「Hola〜! Como estas? (ハーイ、調子はどう?)」と笑顔で一人ひとりに声をかけた。

最初の1、2日は、私の挨拶に怪訝な顔つきをするワーカーもいたが、すぐにみんな笑顔で手を降って挨拶を返してくれるようになった。
基本はラテン気質の陽気なメキシコ人ワーカーだ。相手が敵ではないとわかれば、すぐに「アミーゴ、アミーゴ」と仲良くなれる。

“コワモテ”ワーカーも笑顔を返してくれるように