夜中のラッシュ

出荷の作業は、全行程の一番最後なので、ピーク時には仕事が終わるのが夜中の1時や2時になることもしばしばあった。0時前に終われば「今日は早めに終わったね」で、22時前に終わることはなかった。
しかも、チェリーの収穫は1日の休みもなく続いた。約2カ月の限られたシーズン内に収益をあげるため、チェリー農家はできるだけ多くのチェリーを収穫し、工場もどんどん出荷する。連日午前様だった。

工程の順番の問題だけでなく、チェリーの出荷量の不確定さも出荷作業が遅い時間帯になる要因だった。

農家から納入されたチェリーは、夜中のうちに燻蒸され、翌朝から洗浄作業に入る。工場に納入されたばかりの時は、小枝や葉、傷んだチェリー、まだ熟していないチェリーなども混じっているし、チェリーのサイズもバラバラだ。

洗浄の後、センサーでサイズごとに分け、手作業で傷んだチェリーを丁寧に取り除くと、実際に出荷できる“商品”となるチェリーの量は、元の納入量の数割にしかならない。
チェリーの品質は日によってバラつきがあり、実際に箱詰め作業が終わってみるまでは、その日どの品種のどのサイズが何箱出荷できるのかわからない、という状況だった。夕方あるいは夜になって、出荷量のメドが立ったところで、営業担当はオーダーごとにチェリーをどんどん振り分けていく。

顧客からのオーダーは、品種とサイズごとに、ビング種のサイズ10号を500箱と、ブルックス種のサイズ11号を250箱…というように指定されてくる。
営業担当の手腕の見せ所にはなるのだろうが、顧客が欲しがるものはどこもだいたい一緒なので、こちらを立てればあちらが立たず…で、限られた時間の中でバタバタとオーダーの内訳を決めていかなければならない。

確定したオーダーを、やっと内訳書の指示通りにクーラーでセットし終わったと思ったら、やっぱり変更が出た、なんていうことも頻繁で、ひどい時には1つのオーダーに対して、10回近く内訳が変更になったこともある。
その度に0℃近い極寒のクーラーの中で、西海岸カーゴ社のスタッフはパレットを崩して、積み直したり、あちらのオーダーとこちらのオーダーの商品を入れ替えたり…ということを繰り返すのだ。
最後の微調整はトラックを空港に向けて出発させなければいけない時間ギリギリになることもよくある。

そんな体力勝負の作業を、私は他の男性スタッフと一緒にやるハメになった。
こんな過酷な労働環境で仕事をするなんて、全く想像していなかったし、倉庫の中で、力仕事をしている女性は私だけだった。

それでも、0℃という環境下、夜中までの作業、肉体労働ということなら、まだ耐えられた。 けれど、本当に私が戦わなきゃいけない相手は、そんな表面的なものじゃなかった。

ローディング(荷積み)待ちのトラックの列
井ノ上 美和(いのうえ・みわ) BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会) ナビゲーター、ジョーシス 顧問
井ノ上 美和

メキシコ、スペイン在住歴6年のラテン系。
通信ベンチャー、医療用具メーカーなどの国際ビジネス業界で、オペレーション・営業のマネジメント、採用・社員教育、ISO/FDAの品質監査、広報、システム構築など、様々な業務に携わった経験を活かし、海外および国内企業で業務・組織改善、人財育成などのコンサルティングや研修を行う。
学習院大学、HAL東京などの教育機関や大手IT系企業を中心に、人生観や生き方をテーマにした講演会も展開。
スペイン語の通訳翻訳業では、ビジネス通訳のほか、フジテレビ「奇跡体験!アンビリバボー」などメディア出演も。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。