そこはアメリカンチェリーの出荷工場だった。
周囲のチェリー農家が収穫したチェリーを工場に納入し、工場が燻蒸消毒を行う(日本に輸入される果物には、消毒による害虫駆除が義務付けられている)。さらに工場で、洗浄、選別、箱詰め、冷却といった工程を経た後、チェリーはトラックで空港まで運ばれ、日本やその他のアジア諸国、ヨーロッパなどの海外市場やアメリカ国内の市場に空輸される。

西海岸カーゴ社は、このチェリーの海外への出荷手配を行っていた。
出荷量に合わせて、空港までのトラックや航空機の貨物スペースを確保し、工場の倉庫で出荷前の商品チェックをし、輸出入に必要な書類を揃えて、トラックに積み込む。日本の大手スーパーマーケットチェーンとの取引もあり、商品の質はもちろん、スピーディーかつ正確で、丁寧な対応が求められた。

チェリーの事情

アメリカンチェリーは付加価値が高く、農家や工場にとっても重要な収益源。多い時は、700人以上の季節労働者が集まって工場で出荷作業に従事する。ひとたびチェリーのシーズンが始まると、農家も工場のワーカーも1日も休むことなく、毎日朝から晩(時には夜中)まで出荷作業を行う。

カリフォルニア州のアメリカンチェリーの収穫時期は、気候によっても多少差があるが、4月中旬〜6月中旬の約1カ月半〜2カ月間。チェリーのシーズンが終わると、タマネギ、スイカ、パプリカ、ウォールナッツなどの農産物が続く。

チェリーワーカーは、カリフォルニア州のチェリーシーズンが終わると、オレゴン州やワシントン州のチェリー工場へ移動し、あるいは他の仕事をし、また翌年チェリーのシーズンになるとこの地に戻ってくる。

ロスの市街地で仕事をするつもりで来たら、チェリー畑の広がるド田舎で、しかも当初イメージしていた“通訳”の仕事からは、想像もつかないほど、過酷な労働が待っていた。
0℃前後の冷蔵倉庫の中で寒さに耐えながら、男性ワーカーに混じって、5〜10キログラムあるチェリーの箱を上げ下ろしする…しかも毎日、朝から夜中過ぎまで。

結果的に、私は“通訳”を超えて、業務改善にまで着手することになる。
けれどそれこそが、“私にしかできない仕事”だったのだと、今だから言える。

アメリカンチェリー