井ノ上 美和
BPIA(ビジネスプラットフォーム革新協議会) ナビゲーター、株式会社F&S Creations 顧問

西海岸カーゴ社(仮名)の社長は、とにかくジョークやいたずらが大好きな人だった。“おやじギャグ”の連発はもちろんだが、長年の海外生活のせいか、日本人の感覚では考えつかないような悪ふざけやいたずらも多かった。たまに度を超し過ぎて相手を怒らせてしまったり、トラブルになることもあったが、とにかく毎日次々といたずらを仕掛けては楽しんでいた。

“人気度”を測る実験で予想外の結果に

チェリーシーズン1年目のことである。ある日、

「Miwaはパレッタイズのワーカーにとても人気があるというけれど、一体どれほどの人気なんだ…?」

そう思った西海岸カーゴ社の社長は、ある“実験”を思いつく。

もちろん、私が自分で「私は人気者です」と言ったわけではなく、私が現場に入ると笑顔で挨拶をしてくるワーカーたちの姿を見て、西海岸カーゴ社のスタッフたちが、「Miwaは人気者だ」と社長に話したらしい。

社長の“実験”は、私の顔写真をレターサイズ(A4サイズほどの大きさ)の紙にプリントアウトし、チェリーのカートン箱のふたの上に貼り、そのカートン箱をパレッタイズの手前の生産ラインから流す、というものだった。

「もしMiwaが本当に人気者なら、ワーカーたちは、ファンクラブのファンのようにカートン箱に飛びついて、Miwaの写真の奪い合いになるんじゃないか…」

それが社長の予想していた光景だった。

たとえ、誰かの“人気度”を知りたいと思ったとしても、日本の企業でこんな方法を思いついたり、試す人はいないだろう。下手したら、セクハラで訴えられかねない。

社長は、私の顔写真付きのカートン箱を生産ラインのベルトコンベアに流してから、そっと物陰に隠れてパレッタイズセクションの様子をうかがっていた。

ところが。
予想に反して、写真付きのカートン箱がパレッタイズのセクションに流れていっても、ワーカーたちは飛びつかない。
「Miwaの写真だ〜!」と、みんなで騒ぎはするものの、飛びつきもしないし、奪い合いにもならない。
カートン箱はそのままパレッタイズのベルトコンベアをゆるゆると流れていった。

「な〜んだ、つまらん。
別に大した人気でもないということだな」

と、社長はそのまま事務所に戻ってきた。