統括マネージャーは大きなため息をついて

「今後は絶対に社長にレポートを送らないで。
営業マネージャーや、品質管理マネージャーや、他の人にも送らないで。
これは、Miwaと私だけの間でやりましょう。」

と言ってきた。

なんと、西海岸カーゴ社の社長は、私が送ったデイリーレポートをそのまま添付して、チェリー工場の社長や営業マネージャー、品質管理マネージャー、さらには、直接チェリー工場の業務には関係のないロスにいる西海岸カーゴ社の社員などにも一斉にメールを送っていた。

しかも

「これ、どうするおつもりですか?」

というメッセージを付けて。

もしかしたら、西海岸カーゴ社の社長にはそれほど悪気はなく「今後、品質改善をどのようにしていく予定ですか?」くらいの気持ちで書いたのかもしれない。だが、チェリー工場のマネージャーたちはそうは受け取っていなかった。

「おい、おまえんとこの品質管理どーなってんだよ!
こんなの出荷していいと思ってんのかよ!
どーすんだよ、これ!」

と、怒鳴り込まれたくらいの「どうするおつもりですか?」だった。

このメールを受け取ったチェリー工場の営業マネージャーは、過剰に反応し、ここぞとばかりに統括マネージャーを責め立てた。

「今までこんな品質のものを出荷してたのか!
だからこっちはクレーム処理で大変なんだよ!
現場がしっかりしてないからだろ!
どうするんだよ!」

どこの工場でもよくあることだが、営業と生産や、生産と品質管理、あるいは品質管理と営業は、あまり仲が良くない。
逆に仲が良過ぎて、なれ合いの関係になってもらっても困るのだが、単に対立してお互いに責任のなすりつけをしているだけでは意味がない。

今回指摘されるまで、数年間もこんな状況を放置していたのは品質管理マネージャーも一緒だし、営業マネージャーも、今まで代替品の出荷やクレーム処理でどれほどのコストがかかっているのか計算さえしたことがない。西海岸カーゴ社の社長にしても、ただひたすらスタッフに修正作業をさせてきただけだ。
決して、統括マネージャーだけが責められるべき問題ではない。

しかも、統括マネージャーは、マネージャークラスで唯一の女性だ。
こういう時に一気にたたかれるのは、想像に難くない。

せっかく、現場は少しずつ品質に対する意識が高まって、自主的に業務改善に取り組もうとしている矢先。
ここで頭ごなしに、「おい、どーすんだよ!!」とたたかれてしまっては、現場は動かなくなる。

「彼らは絡めないで、私たちだけでやりましょう」

それが統括マネージャーの考えだった。