川口 啓
学校法人産業能率大学 総合研究所 経営管理研究所
受託開発センター長

仕事センスがあるかどうかの違い

 前回、今年4月に実施したアンケート調査結果を活用して「仕事センス」の意味するところと重要性について触れ、果たして仕事センスを高めることができるのかと問いかけをしました。今回は、それに対する解について整理していきます。

■「仕事センスとは?」~アンケート調査から読み解く「仕事センス」の重要性~
http://www.nikkeibp.co.jp/atclhco/15/052300022/052300001/

 前回紹介したアンケートにおいても、新卒2年目社員が「仕事センス=数字や実績」と捉えているのに対し、先輩社員は「仕事センス=現場での判断力や調整力、察知力」と捉えている傾向があるということが分かりました。また、仕事センスがある人の特徴として「自分で判断して行動する力がある」がトップにきており、先輩社員の考える仕事センスと一致していることからも、仕事センスは社会人経験の積み重ねが関係するのは間違いないようです。

 ここで、仕事センスがあるかどうかを見分けるための例を1つご紹介します。

 よく過去の仕事経験を語る場面があるかと思いますが、この時に仕事センスの高さの違いが明確に表れます。これは前述した、社会人経験を積み重ねるなかで仕事センスを高めてきたか、そうではなかったのかの違いであるといえます。過去の経験については、人によって成功や自慢を中心に語るか、失敗や苦しさを中心に語るかに分かれます。結論としては、失敗や苦しさを語る人の方が仕事センスは高いといえるでしょう。

 通常は触れたくない過去の苦い経験を語るということは、それが本人にとっての分岐点だったり、目に見えない何かの感覚を獲得した瞬間であったりしたことにほかならず、それこそが仕事センスを見いだし育む機会になっているからなのです。

 成功や自慢話が中心で、失敗や苦しさを表に出さない人は、成功のみを自分の能力と決めつけ、失敗経験を自身のその後の糧にできていない、あるいは失敗そのものを自分の問題として受け止められていない可能性があります。

 要は、経験の内容よりも受け止め方の違いなのです。言い換えれば、仕事センスの芽を見いだしたり高めたりした機会を自覚できているかどうかです。

 自分の周囲を想像すると、人によって仕事センスがあるかどうかがイメージできるのではないでしょうか。それはもちろん自分自身についても同様です。

 そう考えると、仕事センスを磨く機会は、仕事を中心とした社会人経験のなかにあり、決して特別なものではないということが理解できると思います。