関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 前回までは、部下の目標設定について説明した。今回からは、設定した目標を目指す際に、マネジャーはどう支援すればよいかを見て行こう。それにはステップがあるが、まずは、仕事のアサイン方法から入る。

 目標設定を目指していくには、本人に動機付けが必要だ。なぜこのプロジェクトにアサインしたのか、なぜこの立場としたのかを部下に伝えよう。

 例えば、これまで7人程度の小規模プロジェクトでプロジェクトマネジャー(PM)を担当していた部下に、大規模プロジェクトの中でチームリーダーとして7人程度を管理するようにアサインする場合を考える。小規模プロジェクトでは、遅延が起きてもPMがプレーヤーになったり、全仕様をコントロールしたりしてなんとかリカバリーできるものだ。しかし、大規模プロジェクトの中の1チームでは、PMへの報告、他チームとの仕様の調整、数多くの会議などにより、リカバリーが困難になる。

 そこで、同じメンバーの数であっても、大規模になるとより高度なマネジメント力、調整力、メンバーコントロール力が必要になる。そして、そのスキルを高めてほしいことを部下に伝える。そうすることで、部下本人が成長目標を意識しながら仕事できるようになる。

 同時に、マネジャーとして仕事を支援する旨もしっかり伝える。通常は昨年よりも目標が高く設定されるため、不安に思う部下が多いものだ。モチベーションを高めるには、不安から解放してあげることが重要になる。

 仕事の先行きが具体的でなければ不安になる部下もいる。この場合、早めにWBS(ワークブレイクダウンストラクチャー)を作るようにしよう。

 また、リスクがある仕事に対し「できない」と否定から入る部下もいる。この場合は、リスクを軽減するために支援していく必要がある。ただ、新しい技術や領域の仕事の場合、問題が発生した際にマネジャーとして良いアドバイスが与えられないこともある。それでも、一緒に考えたり、社内で分かる人に橋渡ししたり、専門家を雇ったりなど支援が可能だと伝えれば、不安が軽減する。

 必要以上に自分のスキルを低く考える部下もいる。過去の経験からできる部分と、チャレンジの部分を明確にしてハードルがさほど高くはないことを理解させよう。

 リーダーやPMなど、チームのトップが「成功するイメージ」を持てなければ高い確率でその仕事は失敗する。マネジャーが部下の感じるリスクを軽減させることで、部下は成功へのイメージが持てるようになる。

 マネジャーは、業務やスキルアップにとどまらず、働き方についても支援すると部下に伝えていただきたい。育児のように明確に把握できる事柄だけではない。病気の家族がいる場合に「残業は極力したくない」「突発的に休む可能性がある」など希望を言いやすい環境を作ろう。筆者も以前、そうした話をマネジャーに伝え、顧客のキーマンにも事情を理解してもらった後は非常に働きやすくなった。ただ、根掘り葉掘り聞く必要はなく、言える環境を作るだけでよい。

 部下の育成は、実行開始時にもこれだけのコミュニケーションを取らなければならない。部下の成長以上にマネジャーのマネジメント力が一番強化されるのかもしれない。

(「日経SYSTEMS」2015年9月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。