関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 キャリアプランを立てる際、「個人の希望」と「組織の目標」のすり合わせが必要だ。だが、部下の「なりたい自分」と組織の目標が合っているかだけでなく、「なりたい自分」が部下にマッチしているかを、上司として考える必要がある。キャリアプランには、本人の希望、資質、スキル、年齢、環境などが影響する。今回は資質とスキルについて深堀りしよう。

 社員のスキルを把握するために定期的にスキルチェックを実施する企業がある。インフラの設計技術やコーディング・設定技術などに対し「知っている/指導の下できる/独力でできる/指導できる」という評価軸で測る。これらはテクニカルスキルの領域だが、仕事を進める上ではヒューマンスキル(対人関係能力)とコンセプチュアルスキル(概念化能力)も必要になる。これらは、上記の評価軸では測り難い。

 ヒューマンスキルとは、リーダーシップ、コミュニケーション、ファシリテーション、ネゴシエーションなどだ。ステークホルダーとの間で意見交換や決断をするために大切なもの。顧客との関係構築の状況や会議の振る舞いなどで、周りから的確に評価できる。

 コンセプチュアルスキルとは、起こっている事象を構造的・概念的に捉えて物事の本質を見極めたり、抽象的な考えや全体感をつかんで具体的な形に落とし込んだりするスキル。例えば、プロジェクトで問題が発生している中、情報収集して共通する根本原因を見つけて解決策を導く、といったものだ。

 ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルのレベルは、その人のこれまでの人間関係や考え方で大きな差が出る。30代中盤まで伸びるスキルといわれている。テクニカルスキルは、年代に関係なく伸びるとされているが、物事にこだわり深く知りたいと思う資質で違ってくる。そのため伸び率は資質に依存する。

 このように、スキルは適性や資質に依存し、人により伸び方が違う。そのため、部下のスキルを正確に把握しキャリア支援を進めることが重要になる。

 では、どのようにスキルを把握するのか。スキルは「できること」であるため、部下の業務経験を元に、どのような立場で何をしたかを明らかにすると見えてくる。

 まずは、部下が自分で業務経験とスキルを挙げ、上司が確認する。テクニカルスキルのみを挙げる部下もいれば、ヒューマンスキルのみの部下もいる。そのため上司は、部下本人が気づいていないスキルを見つけるための支援をしよう。

 特に、同じ組織に長く所属する人にとっては、気付かないスキルが多い。筆者も前職では「同世代の多くが出来ていることを同じようにしているだけ」と思っていたため、自分のスキルや強みが全く分からなかった。違う組織に入って、自分が難なくこなす仕事をできる人が少ないことに気付いた。組織に所属する多くのメンバーが出来ることが、組織としての強みなのだが、上司には部下個人に気付かせてほしい。

 ただし、上司と部下とのこれまでの関係により、本当のスキルが見えない場合がある。その場合には同じプロジェクトのメンバーや後輩、顧客に聞いて棚卸しするとよい。

 スキルを明らかにすれば、その強みを生かせる「なりたい自分」を描きやすくなる。強みを部下の自信につなげて、将来を描けるようにするために、ぜひ支援していただきたい。

(「日経SYSTEMS」2015年07月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。