関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 人材育成は一般的な仕事と同様、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルを回すことが必要になる。今回は一番大切な「Plan(人材育成計画)」を説明しよう。

 IT人材育成の現場では「社員の年間目標」を見かける。それには、数値化した業績目標と、今年取得したい資格が併せて書かれている。しかし社員からは、「資格を取得しても担当している業務とは関係がない」「自分の将来像が見えない」といった声が上がる。

 このように、会社が設定した年間目標には社員をどう成長させたいかが分からないケースがある。社員の成長は本来、組織の将来に向けた目標を達成するためであり、業績の目標と育成の目標は連動している必要がある。

 マネジャーは中期経営計画を基に、各組織の実行計画に落とし込むことで3〜5年間で取り組む活動が具体化する。新事業に取り組む場合、適切なスキルを持つ人材の育成が重要になる。

 例えば、情報システム子会社で新たに「グループ会社のIT戦略・IT化構想企画を手掛ける」といった計画を立てた場合、IT戦略やIT化構想企画のための人材が3〜5年後には必要になり、事業規模によって必要な人数も見える。

 それに向けて人材像やスキルは具体的に定義する必要がある。「IT戦略やIT構想企画を立てるプロセスや成果物の理解」というスキルはすぐ思い浮かぶが、筆者の経験上、次のスキルも重要だった。「トップや各事業部の要求を引き出す(聞き出す)力」「引き出した要求を理解して整理する力」「IT化構想を概念的(抽象的)に捉え表現する力」「技術やトレンドの知識」などだ。もちろん、必要なスキルは状況によって異なる。

 そして、3〜5年後に新規事業を本格始動するためには、定義した人材像に合うメンバーを確保する活動が今から必要となる。採用やローテーションで必要なスキルを持つ人材を集める、あるいは今いるメンバーを育成する、といった活動だ。

 メンバーを育成する場合、本人の適性や希望する将来像とマッチしていることが大切だ。将来像が明確で会社の方向性と合致している場合はよいが、大半は将来像が不明確だろう。そうしたメンバーには、将来像を明確にする支援をし、ときには適性を判断して導くことも重要になる。

 この際、「何になりたいの?」と聞く必要はない。例えば、目前の仕事に追われているメンバーに対し、普段の会話で仕事のやりがいや強みを引き出すように心がける。その上で、組織の方向性や必要な人材を示し、マネジャーがメンバーにどのようになってもらいたいかを話していくと会社と社員の方向性を合わせやすい。

 あるマネジャーはメンバーから「新しいBtoCサービスを考え、システム化した時が一番やりがいがあった」と聞いた際、「マーケティングを学ばせてシステムの分かるマーケッターになり、企画部門で活躍してもらおう」と育成戦略を立てた。

 将来像を明確にした後、ようやく今期の目標を立てられる。今期の目標は事業目標達成のために実施すべき具体的な業務内容や数値目標、そして1年間のスキルアップ目標だ。新人であれば、業績よりスキルアップ目標の比率を多くする。こうして立てた目標であれば、マネジャーとメンバーで共に納得できるものになる。今ある目標を一度振り返っていただきたい。

(「日経SYSTEMS」2015年05月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。