関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 マネジャーの働きかけによって、思ったように伸びる部下がいる一方、どうしても伸びない部下もいます。この違いは何でしょうか。能力差もありますが、指導しているマネジャーとの関係性が大きく影響します。信頼していないマネジャーの指導は、正しくても、素直に受け入れられないのです。最終回として、指導するマネジャー側に焦点を当てましょう。

 人間関係を作る上で大切なこととして、「近接性」「互恵性」「類似性」の三つがあります。近接性とは、物理的に近い方が好意を持ちやすくなること。互恵性とは、こちらが好意的であれば、相手も好意的になること。類似性とは、共通点があると好意を持ちやすいことです。

 皆さんも心当たりがあるのではないでしょうか?遠隔地にいる部下より、すぐ近くにいる部下の評価が高くなること、自分が苦手だなと思っている部下は部下の方からも近づいてこないこと、共通の趣味など話題がある部下とは、仕事上のコミュニケーションもスムーズに出来ることなどです。

 仕事へのアプローチの違いも、影響する場合があります。仕事でリスクヘッジするタイプとリスクテイクするタイプの部下について2015年12月号で取り上げましたが、仕事の大枠で全体感を捉えるタイプと、細かく積み上げて全体感を捉えるタイプといった違いもあります。このタイプがマネジャーと部下で違うと、互いの仕事の進め方が理解できず信頼関係が生まれない場合があります。

 信頼関係がないまま部下を指導すると良い結果につながりません。例えば、以下の点について指導時の行動を振り返ってみましょう。
●一方的な指示になっていなかったか。部下に判断させたか。
●部下の改善してほしい行動に対して指導したか。相手の能力に対して批判はしなかったか。能力がないと思わせる態度を示していなかったか。
●自分の思考や、やり方を強制してはいなかったか。

 振り返ると、思い当たるケースがあるものです。例えば、部下が作った計画をマネジャーがレビューしたところ、想定していた進め方と違っており、詳細化もされてなくおおざっぱに感じたため、マネジャーが立てた計画に変更しました。これにより部下は自分が考えた事がすべて却下されたことになります。若手であれば良いのでしょうが、ある程度のベテランだったため、このような支援では、信頼関係が生まれません。

 タイプが異なり「接し難い」と思うと相手も同じように感じるため、マネジャー自らが合せていく必要があります。リスクヘッジするタイプかリスクテイクするタイプか、大枠で全体感を捉えるタイプか、積み上げて全体感をつかむタイプかを理解し、自分と違うタイプの場合には、どのような思考でその結果に至ったのかを聞き、そのアプローチを理解するのです。こうした努力によって部下は自分のことを認められていると感じ、マネジャーを認めて信頼関係が構築されます。

 1年間続けてきた本コラムは、筆者が自らに言い聞かせている事をお伝えした形になりました。すべてを実現できるとは限りませんが、自身が未熟なのを自覚し成長につなげることが大切だと感じています。読者の方々もぜひマネジャーとしてどう成長したいのかを自らの言葉で考えてみてください。

(「日経SYSTEMS」2016年3月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。