関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 多くの企業で社員を評価する時期ですが、部下の評価が苦手なマネジャーも多いのではないでしょうか。評価するマネジャーには、次の四点が求められます。
(1)会社で規定する職位水準を理解し、公平な目標設定と評価をすること
(2)業績評価と能力や態度の評価をすること
(3)事実に基づき、正確で公平で納得感の高い評価をすること
(4)達成できなかった目標に対して問題・原因を明らかにし、今後の改善を具体的に示すこと

 公平に評価するためには、関係者から情報を集める方法をお勧めします。それを筆者が感じた経験からお話ししましょう。

 プロジェクトマネジャー(PM)を集めたPMOの組織で育成支援をしたときのことです。組織に所属しているPMのスキルを評価し、どのように育成するかを定めるための支援でした。

 PMのスキルを評価する方法として、「プロジェクトマネジメント手法」と「コンピテンシー(ヒューマンスキル、コンセプチュアルスキル)」の2軸を評価軸に設定。コンピテンシーに関しては評価者として、本人に加え、上司、同僚(営業担当)、部下(プロジェクトメンバー)による360度評価を実施しました。

 大半は自己評価と他者評価で違いが少なかったのですが、大きな違いが出る人が数人いました。特に大きな差があった人は、(1)本人はプロジェクトマネジメント手法、コンピテンシーともに非常に評価が高い、(2)上司と営業担当はコンピテンシーを低く付ける、(3)メンバーはほどほど高く付ける、という形で(1)自己評価と他者評価が違うだけではなく、(2)(3)の他者評価が割れる、という傾向がありました。

 聞いてみると、営業担当は顧客とPM(評価対象者)の間で板挟みになっており、営業担当がPMに対して顧客の要望を説明しても、攻撃的に否定するだけという実態が判りました。顧客からのクレームも上司の耳に入り、上司の評価も「コンピテンシーに問題有り」となったのです。

 一方、そのPMはメンバーに親身になって接しており、プロジェクト内は雰囲気が良く、メンバーの評価が高かったのです。良い評価は上司の耳に入らず、悪い評価のみが上司の耳に入ったため、上司の評価が良くなかったのです。

 筆者自身も同様な経験があります。部下にIT企画を任せたとき、指導通りそつなく仕事を進めていたため、高く評価していました。しかし、顧客やメンバーからは評価がそれほど高くないのです。理由を聞くと、発言がいつもネガティブで他の人のモチベーションを下げるとのこと。チームビルティングの妨げとなっていたのです。その部下を観察すると相手に不安を与えるような態度や発言が多いことが分かりました。筆者のフィルターを通して良いところしか見えていませんでした。

 このように関係者からの意見を聞き、その視点で観察することで違う一面が見え、公平に評価できます。評価結果のフィードバックでも、関係者の多角的な意見を伝えながら、改善ポイントやより伸ばすべき点を話せるため有効です。マネジャーの主観をすべて取り除くことはできませんが、部下の周りの方とコミュニケーションを取り、自分の色眼鏡を外してみましょう。

(「日経SYSTEMS」2016年2月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。