関 和美
アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長

 今回は、社会人で必要な思考力とは何か、どうすれば思考力を鍛えられるのかを取り上げます。思考力とは「物を考える力」です。思考力を鍛える第一歩となるポイントは四つあります。
(1)常に考えるための機会を作る
(2)疑問を持つ
(3)活動や目的・背景を理解する
(4)視点を変えて考える

 例えば、コストダウンが重要な目的にもかかわらず、例外的な業務もすべてシステム化し、想定コストを大きく超えてしまうケースはよくあります。目的をステークホルダーと共有していたり、目的が達成できているかに疑問を持ったりしていれば、事態を回避できるかもしれません。そして、疑問を持つだけでなく、他に解決できる術を考えます。後工程まで進んでいても本来の目的に戻って俯瞰的に物事を捉える必要があり、業務や運用をイメージしながら多角的に物事を見ることが重要なのです。

 筆者も、同じような反省をしたことがあります。24時間365日運用しているインターネットサービスにおいて、18時以降の処理は翌日の取り扱いにする要件が発生しました。そこで、18時をまたいで利用するユーザーの処理時間をチェックする機能を追加したのですが、後になってから18時を少し過ぎた場合も当日の取り扱いを許容していたことが分かりました。知っていれば余計な工数はかからなかったわけです。要件の背景や目的を理解して全体を俯瞰的に捉え、「そのチェックが必要なのか」とか「他のシステムはどのようにしているのか」と疑問に思い、それを確認しておくべきでした——。

 この四つのポイントをマネジャーとして支援するには、指導する際に質の良い質問を投げかけることが重要です。行き当たりばったりの質問では、マネジャーがどのような思考でその質問に行きついたかを部下が理解できません。

 質の良い質問には、ビジネスフレームワークの活用をお勧めします。ビジネスフレームワークは、物事を考える上での枠組みです。ギャップ分析(AsIs-ToBe)、バランススコアカード(BSC)、SWOT分析、ロジックツリーなどのフレームワークは、目的を考えることや複数の視点で考えること、トップダウン/ボトムアップで考えることができるようになっています。

 上司であるマネジャーは、これらのフレームワークの考え方を利用して質問や指示やチェックをすればよいのです。例えば、ギャップ分析では「どのような状態にしたいのか」「現在はどの程度出来ているのか」「そのギャップを埋めるための方法は今考えている一つしかないのか」といった質問になります。BSCでは、「このプロジェクトは、経営(財務)にどう影響するのか」「顧客にとっては何がよいのか」「業務にはどのような影響があるのか」「だからどのようなシステムが必要になるのか」といった形です。

 このほか、「複数考えた解決策をQCDの観点で評価してみてはどうか」「ヒト、モノ、カネ、情報の観点でWBS(ワークブレークダウンストラクチャー)を作ってみてはどうか」「企画書には5W1Hの観点を入れてみてはどうか」など、継続して質問することにより、部下は自然とフレームワークに沿って物事を考えるようになります。

 上司が質の良い質問ができるかどうかで部下の思考に大きな差が生まれるはずです。

(「日経SYSTEMS」2016年1月号から転載)
関 和美(せき・かずみ) アイ・ティ・イノベーション ソーシアル事業部 部長
関 和美

 金融系のSEとしてネットワークシステムの設計、アプリケーション開発の要件定義や設計を経て、プロジェクトマネジャーを担当。2007年アイ・ティ・イノベーションに入社。通信系大規模プロジェクトにおけるPMOの運営およびPM支援を実施。超上流工程のコンサルティングを手掛け、現在は人材育成、研修事業を推進している。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。