変わる企業と働き手の関係

 退職は卒業か? 最近ニュースメディアなどでも話題となり、この考え方に対しては賛否両論が巻き起こっています。

 退職と聞くと会社と働き手の間で何かしらの不都合があってお別れをする、離婚に近いイメージを持ってしまい、あまりよいイメージではありません。時には、そのお別れの仕方について争いに発展するケースもあり、多くの経営者は、「離職をいかに防ぐか」を考えます。離職率が下がった事例は、成功事例として扱われることが大半で、かくいう我々もいかにロイヤリティを高め、ES(従業員満足度)を高めることで、定着率を上げて離職率を下げるかという側面で企業のお手伝いをしていますが、最近の退職に対する考え方、価値観は変化しているように感じます。

優秀な人財こそ、“卒業”する

 立て続けに複数の企業からご相談をいただいたのが、アルムナイネットワークの構築です。アルムナイは直訳すると卒業生となりますが、企業を“卒業”した人財同士を企業がコストを負担してつなげたいというもので、人手不足にあえぐ不人気業種・企業ではなく、就職人気企業ランキングでは常に上位にいるような企業や、外資系企業からのご相談でした。

 内容としては、「自社において優秀とされる人財は、他社でも同じく優秀と評価される。そんな優秀人財は、ワクワクさせる仕事や環境を自社で用意できないと、すぐに別のところに行ってしまう。それをつなぎ留めることはもはや不可能なため、1度退職した人が、再度自社の環境を魅力的だと思って戻ってきてくれたり、他の優秀人財に対してOB・OGとしてポジティブな情報発信をしてくれたりするように、退職後も会社として接点を持っておいた方が得だ」というお話でした。

 退職者をあの手この手でなんとか引き止め、最後に気まずくなるようなお別れの仕方はせず、本人の意思を尊重しつつ、次に一緒に働くチャンスや、そこからのつながりを狙うという考え方であり、退職に対する企業の考え方の変化を感じる事例でした。

働き方改革が、働くスタイルの多様化を加速させる

 働き方改革も進み、各企業では、副業解禁や働き方の柔軟性向上への取り組みが加速しています。優秀なエース社員から副業をしたいとの申し出があれば、会社側も真剣に検討せざるを得ません。また、優秀な人財が育児や介護で離職することも会社にとっては大きな痛手です。企業に所属しないという選択肢を選ぶこともより一般的になっており、先日開催した弊社主催の「働き方改革」をテーマにしたシンポジウムでは、クラウドソーシングの事例が紹介されました。

 例えば、「以前は企業に所属することが信頼を得る唯一の方法であったが、受発注を行うサイト上にフリーランサーの評価が公開されることで、個人であっても信頼を得て、大手企業と仕事ができる。企業に属していた時よりも働き方の自由度も高まり、得る報酬も高い」という事例が紹介されました。

 このように、働き手の選択肢が増えることは働くことへの価値観の多様化を加速させます。新卒採用の現場でも、すでに自分でサービスを立ち上げている学生が、そのビジネスとの兼業を前提に新卒入社できるかを質問してくるという話も耳にしました。冒頭に退職が“離婚”ではなく“卒業”へと変化していると書きましたが、就職は企業との“結婚”ではなくなっています。こうした働き手の価値観の変化を企業側も敏感に感じ取り、対応していかなければ生き残れない時代がもう目の前まで来ています。

変化を“危機”と捉えるのか“好機”と捉えるのか

 前出の就職人気企業や外資系企業などのように、卒業生ネットワークを構築し、次の転機で出戻ってもらうことや、OB・OGからリファラル採用につなげるという、変化を好機と捉えて、中長期的な目線で活用する企業も出てきています。ここからは退職者との接点継続による事例をご紹介していきます。