統合10年の節目に「育成にストレートに直結する評価」を検討

米川:あとは、役員間協議のなかでは、事業統合から10年が経過したので、現在の事業環境、人員構成などを踏まえ、MBOや行動評価のあり方について、見直しを検討したらどうかという声が多数上がっています。

吉田:今のやり方を変えるということですか? やめてしまうということですか?

米川:やめるというよりは、ちゃんと育成にストレートに直結するような評価の仕方ですよね。例えば、現在は、専門性の高い人材の育成・評価という考え方が確立されていません。今の当社の行動評価は課題設定、判断決断、対処実行、折衝調整、専門性、育成指導の6項目で、各項目6分の1の評価でしかないので、専門性の高い社員は不利なのです。ゼネラリストと同じような配点、比重、構成比で専門性を評価されているので、ここ2〜3年、見直すべきとの声が多く、役職者も担当職掌と同じ比重の割合なので、役職層ほど育成指導力や、判断決断力、企画力などの比重が高くあるべきだという意見が多く出ています。4月からの人事部が取り組むべき大きな課題です。

吉田:それはちょっと変えた方がいいかもしれないですね。

米川:またこれは物理的な問題ですが、紙面で管理しているMBOや行動評価のシステム化も検討したい。300名の会社ですが、部門別比較、全社集計などかなりの労力がかかっており、これに成長の記録のような経年管理をしようとすると、手作業では限界ではないかと感じています。17年度中に次の仕組みを考えて、外部のコンサルタントの力も借りて、18年1月か4月くらいから新しい評価制度導入の青写真が描ければよいなと考えています。

吉田:これまでの人事制度の傾向は、全社員一律管理なんですね。だから、その発想が強い場合には、評価項目のウエートもあまり変わらないんです。どんな仕事をしていても同じ評価項目で同じウエート。しかし最近は、先ほど若手のローテーションの話も個別個々にみて、次の職場やその先までというようなことをおっしゃっていましたが、全社員一律管理から個別管理に変わってきているというのが、人事管理の傾向です。

なので、評価基準についても、担当している仕事やそれに求められる能力、成果・業績、そういうものをもう少し細分化して、きちんと評価する。そういう方向に変わってきています。最近では、「タレントマネジメント」という言葉もよく使われるようになりましたが、これも一人ひとりの資質・能力を見たうえで個別管理ができるような環境にまずしていくという話なんですね。いろんな会社の話を聞いていると、皆さんそちらの方向に行っている気がします。

これは、人事としては結構大変なんです。極論すると一人ひとりの人事管理、一人ひとりの将来のキャリアマネジメントをしていかなければならなくなるわけで、そこまで人事としてサポートしないと、なかなか人材育成には結びつかない。

人それぞれ一長一短あります。得手不得手もあります。それを同じようなやり方で、同じような形で育てようと思ってもまず無理で、やはり伸ばすところは伸ばして、ダメなところは改善して、強みを伸ばせるような人事施策を打っていく。いろいろな会社の取り組みや、求める人材像から始まって個別個々の人事ローテーションまで考えるということになると、そこまできちんと手が届くような人事管理や人材マネジメントが実践できることが、人事のあるべき姿になってくると、そんな感じがしていますね。

米川:現在の人事制度は、事業統合時に先輩たちが長年の実務経験を織り込んだ大作です。またその後10年かけて時代に合わせマイナーチェンジしているので、他社と比べ劣っているとか、時代遅れだとは思っていません。しかしながら、次世代の事業戦略に対応するために専門性の高い社員を採用、養成しようという新しい人材育成の考え方には、小手先の修正では対応できません。事業環境が変わり、会社が変わっていくなかで既存制度のあり方と、新しい考え方をどこで融合させて、いつ次に乗り換えるかが重要ですね。

吉田:なかなかこれまでのやり方を変えたり、価値観を変えたりするのは、特に人事の場合は難しいですね。そんなこと本当にやっていいの?とか、今までこういうやり方でやってきたのにすぐに変えてしまっていいのか?とか、変えようと思うと、結構そういう抵抗勢力が実はあるものです。

米川:現在の人事制度は2008年に導入していますので、2017年の今年が10年目になります。10年一区切りと言いますが、経営にとって9年も10年も変わりはないのですが、10年経ったからというのは1つの理由付けとして変えやすい状況といえますね。

吉田:そういう区切りというか、節目は大切ですね。

米川:これを活かしたいですね。

吉田:この節目を活かして、新たなマネジメントスタイルに変わっていくというのもいいのかもしれませんね。

米川:どうしても新しい仕組みにすると、過渡期的に給料が落ちるとか、評価が落ちるということを危惧する社員が出てきますけど、それは何をやっても出てきますから、何か救済措置を設けて乗り切っていくしかないと思います。

吉田:仮にそういう状況になっても、リカバリーが効く仕組みであることも重要なんですよ。これまでだと途中で差がつくと、年功主義の年次管理がずっと続いて、いったんついてしまった差がそのまま定年まで縮まらないという、リカバリーが効かないかなり硬直した人事制度がありました。そういう価値観をお持ちの人も、まだまだ世の中的には多いんですね。そうではなくて、評価によっては、いい時もあるし悪い時もあると。悪い時でも、悪い評価がついたからといって、全く挽回不可能な仕組みではないということも、実は大切なメッセージなんです。