「儲からない時代」こそ、積極的に人に投資する

米川:ストレートに取られると誤解を招くかもしれませんが、今、ワーキングメンバーで話し合っているのは、向こう4〜5年は原油価格も低迷していて、ジタバタしても、もう何をやっても恐らくあまり儲からないだろうということです。だから早い段階でどんどん人をローテーションさせて、人材育成を徹底的にやろうと、そんな話をしています。

同業他社には、会社が儲かっていないから、一切、教育費や研修費を使わせてもらえないというところもありますが、うちの場合は、どうせ投資するなら人に投資しようという考えですね。

吉田:業績が低迷すると真っ先に予算が切られるのは、やはり教育・研修予算ですからね。

米川:業績が低迷しているなかでも、儲けられる社員を育てていこうという感じですね。確かに事業経営と人事がすごく近い会社ではありますね。

吉田:御社の場合も、「求められる人材像」を真摯に検討されていますね。いろんな会社を見ていると、まずここから入る会社が最近増えているというのが1つのトレンドと見ています。

私は仕事柄、人事制度を見直すとか、再構築する仕事が多いのですが、新しい人事制度を作るうえで何が最初の出発点になるかという時に、うちの会社として求めている人材とはどんな人材かということが重要になります。それがブレてしまうと、結局、そういう部分が制度にも反映されてしまいますから、この点は特に押さえておきたいとする会社が増えてきているのが最近の傾向ですね。それで、一生懸命この部分に議論を集中する。実は昨年、私のクライアントには、この部分だけで半年くらいの時間を費やして議論を尽くした会社もあったくらいです。

米川:昨年の7月くらいに、期の真ん中の部店長会議で、「10年後に求められる社員像」を描いて説明し、今後の異動配置・キャリアパスもこういうのを目標にやっていくと打ち出しました。特に若手社員には刺激になったようです。道半ばですが、この1年、迷いながらもいろんな検討を行ってきました。

吉田:でも拝見していると、いつもきちんとお作りになりますよね。

米川:社内全体の育成マインドをかき立てるために、隔月で「育成メールマガジン」を全社員に向けて、発行しています。内容はまず、役員からのメッセージ、自分の若い頃を振り返って、800〜1000字くらいですかね。

それから、我々部店長クラスの若い頃の失敗談。失敗から得た教訓みたいな話ですね。それから、今月の推薦図書や、文章の書き方、今月の研修日程など、自己研鑽を支援するコーナーを設けています。

吉田:反響はいかがですか?

米川:多忙を理由に読み飛ばしている若手もいれば、ちゃんと読んでくれて、メールで感想をくれる若手もいます。

収益環境が厳しいなかで、会社がやるべきことは単なる商取引から事業創出のような世界に変わっていきます。当然、事業創出をやると、コーポレートでの財務や法務という力が必要になってくるので、そういう人材も必要です。従来の、仕入れて売り歩くという営業担当者が必要ないということではありません。両者バランスよく人材がそろえられれば理想ですよね。国際コーポレートの経験があって、戦略的な思考で継続的に企業変革ができるというコーポレートの専門家ですよね。

リスクコントロールのノウハウ、社外の出向経験、若いうちに関係会社の社長、というようなイメージなのですが。これはキャリアパスだけでできるものではないのでしょうけど、キャリアパスもそういうものを踏まえて再構築していかないといけないと感じています。今でも10年3場所を経験させるという原則はあるのですが、人員構成がいびつだと計画的な異動配置は簡単ではないな、と実感しています。

吉田:この前、他のセミナーで、日清食品さんが自社の事例紹介のなかで同じことを言っていましたね。10年3場所。

米川:三菱商事も10年3場所ですね。うちも10年3場所と思っていたのですが、多様な経験のためには3場所では足りないかもしれない。成長には個人差があるので、決め打ちしない方がよいのかもしれません。

吉田:でも10年3場所、3年に1回ローテーションですよね。

米川:最低3年で、早くて2年で異動させる。若手には2年で卒業するつもりで頑張れとハッパをかけています。ただし、専門家養成はこれとは別の考えが必要ですね。