想定通りだった「10年前に作成した社員名簿」

吉田:コンサルタントの立場から拝見していてつくづく感心するのは、御社の場合、社内の人員構成の変化を前提としてきちんと次の打ち手を考えていらっしゃるところなんですね。

ちょうど会社ができて10年。会社を10年かけて統合してきて、10年を1つの節目として捉えている。振り返って考えてみると、その当時から在籍している社員の人たちも随分年齢が上がってきて、その次の世代が手薄になってきた。だから、最近では戦略的に若手を採用して、積極的に次世代の社員を育成していこうとするスタンスが明確に出ていますよね。同時に、今後10年先を見越して直面するのは、社員の高齢化ですね。そういうところも見据えて、人の育成をどうすべきかをきちんとお考えになられている。

少し大げさな表現になりますが、私は常々、「国家100年の計なら、人材育成は10年の計」と申し上げています。つまり、人の育成は、10年タームで考えないと成就しないということです。このような観点からすれば、御社の人材育成への取り組みは、極めて戦略人事のテーマといえるわけです。

米川:10年前、2006年に会社を立ち上げた時に、私は経営企画部で事業戦略、まさに中期の経営計画を作っていたのですが、その時、内々に「2017年の社員名簿」というものを作っていたんです。10年後、どんなメンバーになるのかな、と。今、2017年になりましたが、こればっかりは想定通りですよね。みんな10年年をとって、中堅社員がいなくなって。ちょうど5年前ですが、経営企画部長になった時も、その中間レビューではないのですが、「2017年問題」と称して、経営企画部長の立場で人事に提言をしました。社員30代不在、担当者が全部20代というのは、すでに経営企画部長時代に大騒ぎしていたんです。役員のなかには「会社が若くなることの何が問題なんだ」と言う人もいました。「いや、それでも中堅社員がいないのは大問題ですよ。新任役職者が出せないって大変なことですよ」と大騒ぎして、結果的にそういう経緯もあってなのか、翌年に人事部長の辞令をもらいました。

吉田:だいたい問題提起すると、当の本人に対して「お前やってみろ」って話になりますよね。

米川:中堅社員が手薄になるという懸念は、10年前に会社を作った時からぼんやりとありました。10年後の今、20代中心の若手社員に中堅社員の仕事をさせる、背伸びさせる、ストレッチさせるというのは、言うのは簡単ですが、実際には難しいですよね。

吉田:そうですね。やはり業務は、「教える・教えられる」という経験があって、初めて人は育つものですからね。その中堅どころがスコンと抜けて、じゃあ誰に教わるの?ということになりますからね。

米川:だから、支店長が直接教えなければならなくなります。

吉田:そういう状況になってしまっているのも、ちょっと問題ですね。

米川:それが、結果的に「支店長ナレッジブック」の作成につながることになりました。

支店を統括する販売部長と協議した結果、支店員より先に支店長だろうということになり、手始めに指導者用のナレッジブック作りに着手したんです。

吉田:教育には、様々な手段・方法があります。しかし結局、仕事を覚えるには仕事上でないと難しいところがありますよね。座学で学べといっても、限度はあります。どこかそこら辺のセミナーで聞いてこいといっても、外部の話は聞けますが、当社において、どう自分で仕事上のスキルを磨くかといえば、やはり仕事を通じてしかあり得ないわけです。その時に適切な指導者がいてくれるのと、いてくれないのでは、全然育ち方が違います。