吉田 寿
ビジネスコーチ(株) 常務取締役チーフHRビジネスオフィサー

吉田:今回から「戦略人事」を1つのキーワードとして、企業の人事担当責任者の方にお話を伺うというシリーズを始めることになりました。その記念すべき第1回目ということで、弊社の業務に対して日頃から多大なご協力を得ているアストモスエネルギーの米川部長にご登場いただいたということになります。

米川:先日、御社の細川社長が弊社の人事担当役員のところに挨拶に来られ、リップサービスも含まれていると思いますが、「色々な人事の取り組みをしている『最先端』の企業」と、弊社のことを評されていました。でも、当事者である我々にはそんな認識はありません。人事部スタッフの数も少ないなか、できるところ、問題のあるところから着手しているというのが現状です。

この数年で特に力を入れて取り組んでいるのは、20代を中心とする若手社員の早期育成です。当社は事業統合前の社員が43歳以上、統合以降の社員は33歳以下であるため、働き盛りの30代半ばの中堅社員が手薄といういびつな年齢構成で成り立っています。社員の50%を占める、事業統合後に入社してきた20代を中心とする若手社員に、中堅社員が担うべき仕事をさせているので、その育成が一番の経営課題だと思って取り組んできました。そこにビジネスコーチングやナレッジファシリテーションなど、御社が提供するサービスの力を借りてきたわけです。

部長職対象の研修あるいは新任役職者(副部店長)研修などは、ここ10年、御社にお力添えをいただいておりますが、役職者2年目以降や部長になって以降の研修、経営人材の育成は、未だ手つかずの状態です。

吉田:経営人材の育成もテーマとしてはありますが、むしろ経営視点で人事を捉えるということが、いわゆる「経営人事」や「戦略人事」の領域ですね。これまで、多くの企業では、人事には「人事の砦」ともいうべきものがあって、同じ管理部門でも他とは相容れませんでした。特に伝統的な会社の人事は管理部門内でも力を持っていて、経営トップや経営企画が考えている経営や事業の方向性との連携を取らずに、人事の領域だけで人の異動などを考えてきました。

ところが最近は、経営トップはどういう意向で自分の会社のことを考えているのか、それに必要な人材はどういう人材なのかなどを考慮し、あるべき人材像や採用基準もよく議論されるようになりました。昔は「明るく、強く、逞しく」の3拍子がそろっていればOKというような人の採り方をしていましたが(笑)、今では、こういう方面で事業を伸ばしていくから、そういう人材がどれだけ必要なのかというような議論もなされるようになってきています。

御社の場合、人の採用にかなり力を入れていらっしゃいますし、各現場が求めている人材をきちんと採用することに相当な時間と労力をかけておられるように思います。そういう観点からみると、意識する・しないは別にして、戦略人事的なアプローチを実践されている会社だと感じますね。

米川:そういう意味での努力はしていますし、私も経営企画部長から人事部長になりましたので、経営計画を踏まえながらの採用や育成、登用を意識できているのかもしれません。私のいた出光興産もちょうど3年前に私が人事部長になったタイミングで経営企画部長が人事部長になっていますから、そういう会社も、もしかすると増えつつあるのかもしれませんね。

吉田:まさにそうです。そういう時代的な趨勢にあるようにお見受けしますね。

アストモスエネルギー株式会社 総務人事部長 米川 泰平(よねかわ・たいへい)
1964年6月8日生まれ。慶応義塾大学経済学部卒。
1987年4月 出光興産株式会社 入社  広島支店経理課
1990年7月 北海道製油所 管理課
1993年7月 業務部 需給課
1997年4月 需給部 計画課(通産省担当)
1999年7月 東北支店 ホームエネルギー課
2001年10月 東北支店 販売企画課
2003年4月 需給部 製品課(製品仕入統括)
2005年4月 出光ガスアンドライフ株式会社 経営企画部グループリーダー
2006年4月 アストモスエネルギー株式会社 経営企画部 部長補佐
2008年4月 関東第一支店 副支店長
2012年1月 企画本部 経営企画部長
2014年4月 管理本部 総務人事部長
2017年4月 関東第二支店長に就任予定