平昌オリンピックの日本の活躍はすごかったですね! 私も退勤時間になりましたら素早く帰宅し、テレビでよく観戦しました。

 特によく見ていたのはスピードスケートで、なかでも金メダルを取った女子団体パシュートには感動しました。縦に3人並んで滑走し、空気抵抗が大きい先頭を入れ替えながら、400mトラックを6周します。距離が近い3000m個人の記録では、金メダルのカレイン・アクトレークト選手(オランダ)が3分59秒21、一方日本女子最高順位の高木美帆選手は4分1秒35の5位、同じくパシュートメンバーの佐藤綾乃選手は4分4秒35で8位ですが、パシュートになると日本は世界最速で五輪記録の2分53秒89を出し、銀メダルのオランダに1秒53の差をつけました。

 IoTシステムでも、関連する人や物、あるいはシステムが有機的に連携することにより成果を最大化できた事例がたくさんあります。

 有名なものでは2015年トヨタ自動車と名古屋トヨペットがエコシステムを組んだ事例があります。この事例ではトヨタ自動車の工場内で各車体にICチップ(RFID)を搭載することで、工場出荷時から販売店までの「工程」を「見える化」しました。その結果顧客に納車日を正確に提示できるようになり、また納車までの滞留期間を短縮し(6日から4.5日)、顧客満足度を向上させました。他にもスーパーのイオンが農場と連携し、より新鮮な野菜を顧客に提供することに成功した事例があります。

 ところで、前回のソチオリンピックではオランダに最大14秒も差をつけられていた日本女子団体パシュートはどのように強化され、金メダルを獲得できるレベルになったのでしょうか。

 女子団体パシュートを特集したNHKスペシャルを見ると300日の合宿といった選手自体の強化はもちろんのこと、風洞実験などの科学的データの分析結果に基づいた作戦、例えば、選手間の距離は1m以内に抑える、また先頭選手の交代方法の工夫を行っており、それを実践したことが今回の金メダル獲得に結びついています。

 IoTデバイスが収集した大量データの分析を行うIoTシステムでも、データ分析により売り上げ増、コスト削減あるいは顧客満足度向上といった企業のKGI(Key Goal Indicator)に貢献することが最終的なゴールですが、残念ながら国内ではIoTの適用はもとより、データ分析の結果であるデータの利活用や新しいビジネスモデルの構築といった面で、IoT先進国であるドイツやアメリカに追いつけていません。
(参考 総務省 平成29年 情報通信白書 企業における第4次産業革命の段階)

 IoTで使用されるデータ分析の手法については大きく分けて以下のものがあり、目的によって使い分けられます。

■統計解析
(1)データ全体の推測:平均値、中央値、分散など
(2)データの関連性を把握:相関分析、回帰分析、決定木モデルなど
(3)データの大まかな特徴を把握:成分分析、クラスター分析など

■機械学習
(1)データの分類や予測:教師あり学習。過去の結果付きデータを学習し、将来を予想します。迷惑メールの振り分けなどに利用されます。
(2)試行錯誤による技術向上:強化学習。行動を点数化(報酬)し、点数をもとに試行錯誤しながら最適行動を学習します。自動車の自動運転などに利用されます。
(3)画像・音声認識:ディープラーニング(深層学習)。人間を模したデータ処理構造で、大量の計算を繰り返して複雑なデータ(画像・音声)の学習を行います。

 これらのデータ分析技術を持ち、データ分析結果のビジネス適用を支援するのが、IT技術とビジネスマインドを兼ね備えたデータサイエンティストです。 データサイエンティストは、企業のKGIの向上につながる傾向や特性を見つけ出すことで、単なるデータの山を「金山」に変えてくれます。

 IoTシステムの適用が進んでいくなか、IoTシステムの最終的な価値を決定するデータサイエンティストは、IoT先進国であるドイツやアメリカにパシュート(追撃)するためにも、今後ますます必要になってくることは間違いありません。

※記載されている会社名、商品名は、各社の商標または登録商標です。

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川口 幾雄(かわぐち・いくお) 株式会社 日立インフォメーションアカデミー
L&D第二部 上席インストラクタ
川口 幾雄

東京理科大学理工学部卒業。日立製作所にてストレージのファームウェア開発を経験後、ストレージ技術者に対する教育に従事。

以下のような幅広い研修を担当。
・新人研修、情報処理関係講座、ネットワーク研修、言語系(C言語・Java)
・関連プラットフォーム(サーバ、メインフレーム)

その後、日立ストレージ研修シリーズ「Hitachi Storage Solutions」の立ち上げに参画、研修取りまとめ業務・企画、講師業務を担当。現在、IoT関連研修を中心に講座の企画、講師業務を担当。

※筆者の会社名および役職は執筆当時のものです。