どのタイミングで制度の導入をすべきか?

 セミナーであれば、その都度その都度の、いわば一過性のものですが、制度はずっと運用されることになります。それでは、制度の検討は、どのタイミングで実施されるべきでしょうか?

 まず言えることは、できるだけ社員数が少ないうちに検討すべきということです。実際に問題意識の高い中小企業の場合には、20〜30人規模の段階で、今後の経営計画や自社の組織規模の拡大を視野に入れて、人事制度の検討に着手しています。

 人数が増えてしまった段階で制度を導入すると、必然的に導入コストと負担が増えます。評価者研修の実施なども、人数が増えれば増えるほどコストがかさみます。制度に関する説明も、小規模組織のうちに社員に伝えていく方が、コストも安いし運用もスムーズです。何より、組織としての成長段階の早い時期から人事制度の運用を経験していれば、制度活用のための運用スキルの向上にも役立ちますし、ノウハウの蓄積にも寄与します。

 導入コストという観点では、その検討範囲によっても様々で、数百万円から1000万円くらいの幅の中での検討となってくるでしょう。仮に、人事制度の導入に1000万円かかったとしても、10年運用すれば1年で100万円ということになります。100万円で制度が構築できて運用までできるとしたらどうでしょうか? 制度導入にかける費用対効果は、このような観点から判断されるべきものだと思います。

 人事制度を活用するということは、評価者であれ被評価者であれ、一人ひとりがその仕組みをよく理解し、自社が展開しているビジネスモデルの中で自分自身が成果を上げるということがどういう意味合いを持つものかを深く認識し、実際に実践することで実践スキルを磨いて、結果として現実的な成果貢献に寄与することにほかなりません。それは、個人の経験学習を通じた組織学習の実現ということなのです。

個人と組織のスパイラル成長を目指して

 これまで述べてきたように、人事制度を適正に運用することによって、人材の成長は加速します。また、この場合、個人の成長の方向感が組織の方向性ときちんとリンクしていることが重要です。組織の方向性と個人の目指すべきところとのベクトルを一致させるものが、成果評価の仕組みとしての目標管理制度でした。人事制度の中でも評価制度がその要となるということです。

 また、会社のミッションやビジョンなどを評価の基準に落とし込んだバリュー(行動規範)などを評価基準に加える企業も増えてきました。これは、単に短期的な成果や業績のみを追求するのではなく、自社の社員として会社が価値を置く行動を実際に実践できる社員を1人でも多く育成しようという意図からです。また、そんな人材が本当に育成されているか、定期的に確認していくことに重きが置かれてきているからです。

 評価制度を適正に運用する中で、社員は自らの行動を振り返り、目標達成に向けたプロセスを検討し、必要に応じて改善します。上司としての評価者は、部下である社員の目標の進捗状況と日々の行動を確認し、必要に応じてコーチングやフィードバックを実施します。このような取り組みの中で、個人も成長し組織も成長していくのです。人事評価の世界では、これを「パフォーマンス・マネジメント」(Performance Management)と呼んでいます。直訳すれば「業績管理」ということになりますが、このパフォーマンス・マネジメントの実践そのものが、正しい意味での人事評価の実践となるのです。その結果、図表2に示すように、個人と組織のスパイラル成長が実現されることになります。