優秀な人材を採用しても最初のうちは赤字社員

 常に人材不足に悩む中小企業ですが、仮に優秀な人材を採用できたとしても、多くの場合、最初のうちは赤字社員です。どんなに優秀な社員が入ってきたとしても、入った月はほぼ赤字。つまり、業績貢献や利益貢献できない社員がほとんどだということです。

 この赤字社員を早期に黒字化させるのが、企業の成長速度に関わる重要な要素となります。いつ黒字社員になるかが、企業の成長速度を決定します。入社した社員の成長速度が、イコール企業の成長です。そのためには、優秀な社員が入社してくる仕組みづくりが必要となります。ここに、人事制度の重要性が生まれてきます。

 人事制度が未整備な状況だと、「入社してからの自分の将来像が描けない」とか、「理想のキャリアを提供してもらえるかどうか不透明」といった声が上がってきます。また、一定の賃金秩序を持った給与体系が存在していなければ、入社後の生活基盤に危うさを感じてしまうでしょう。その結果、せっかく採用できた優秀社員でも、会社を辞めてしまうのです。

 優秀な社員が早くビジネスに慣れるためには、最低限でのマニュアルの整備や業務の定型化が必要となります。しかし、優秀な人材がチームや組織で力を発揮できるかどうかは未知数です。例えば、仮に優秀な社員が3人いたとしても、彼らがバラバラに動けば、単純に1+1+1にしかすぎません。しかし、この3人がチームを組めば、3人を合わせた以上の力を発揮する可能性が出てきます。ここでキーとなるのが、リーダーの存在です。人事制度を適正に運用するということは、組織の中にリーダーを育て、個の優秀さを掛け算で引き出すことにも寄与するということです。

人事制度が要らない会社

 もちろん、人事制度が要らない会社というのも考えられるでしょう。例えば、会社をこれ以上大きくしないと社長が決めているような会社。あるいは、社長と社員がいつも同じ空間にいると感じられるような会社。社長がいつもきちんとみんなのことを見てくれているから大丈夫と、社員の誰もが考えているような会社です。このような会社の場合には、人事制度や評価制度は要らないと判断できるかもしれません。

 しかし、人事制度の導入が求められる背景には、会社の成長とともに社長の目が組織の末端にまでは行き届かなくなってくるという現実が存在しています。組織の成長とともに、社長と現場との間に距離感が生じてくるのです。例えば、人員規模別にざっくり見ていくと、社員数が数人〜20、30人規模であれば、まだ社長の目が届く範囲で、社員全員の顔と名前が一致します。しかし、これが100人規模に成長すると、社長1人では社員を把握するのがかなり困難になってきます。200人規模ともなるともう限界で、もはや社員の顔と名前が一致しないという状況に陥ります。こうなってくると、人事制度や評価制度を導入して、組織を仕組みで回していく必要性が出てくるのです。組織の成長は、必然的に制度や仕組みの導入を求めることになってきます(図表1参照)。

 よく人材育成の名目で、外部のセミナーや研修へ参加させるということが行われています。優秀な人材であれば、セミナーに出席するだけで業務上の成果が上がるかもしれません。しかし、大多数の普通の人材を成長させるということが企業のテーマです。そのために、制度導入の検討が図られることになります。人事制度の活用は、この普通の人材の層の底上げに効果を発揮するのです。